機能性表示食品の安全性に疑念を広げている。原因を突き止め、被害拡大を防がねばならない。
小林製薬(大阪市)の「紅こうじ」を使ったサプリメントを摂取した人に、健康被害が出ていることが分かった。
2人が亡くなり、いずれも腎疾患とみられている。サプリ摂取後に入院した人も多い。健康被害は昨年9月以降に製造された「紅麹(べにこうじ)コレステヘルプ」を摂取した人に偏っているという。
機能性表示食品で健康被害が確認されたのは初めてだ。紅こうじの一部から検出された「カビ由来の未知の成分」が腎疾患につながった可能性があるというが、原因成分は特定されていない。
紅こうじは、血中コレステロール値を下げる効果が期待できるとしているほか、食品の着色や風味付けなどにも使われている。
健康志向の高まりで機能性表示食品の市場規模は伸びており、不安が広がるのは当然だ。
問題を受け、大阪市は3商品の回収命令を出した。同社の紅こうじ原料を使用した製品の自主回収は全国に広がり、中国や台湾では関連商品の流通が停止した。
原因究明の鍵となる成分の特定を急ぐ必要がある。会社側は調査に1、2カ月ほどかかるというが、混乱の長期化を避け、消費者の安心につなげるべきだ。
小林製薬の発信遅れが被害拡大を招いたことも否定できない。
会社側には1月に、サプリとの関連が疑われる症状で入院した患者がいるとの情報が医師から寄せられ、2月6日には小林章浩社長が腎疾患の症例報告が複数あることを把握していた。
当初、海外で被害の報告事例があるカビ毒「シトリニン」の存在を疑ったものの検出されず、原因を特定できないまま、3月22日になって問題を公表した。
小林社長は報告を受けた時点で、何らかの形で回収になるだろうと覚悟していたという。
それならば早急に公表し、使用停止を呼びかけるべきだった。健康被害を招く問題を放置したトップの責任は極めて重い。
産地偽装など、食品の安全を巡るトラブルはこれまでも繰り返されているが、甚大な健康被害が出ることはまれだ。
機能性表示食品は、事業者の責任で健康の維持や増進に関する機能を示すとはいえ、今回の問題で制度全体の信頼が揺らいだ。国の徹底した点検が求められる。
内科専門医は、現状では一部の製造期間の製品に被害が集中しており、他の紅こうじ原料の製品を摂取しても過度に不安になることはないと指摘している。
ただ、尿の出が悪い、手足がむくむなど腎機能で気になる症状があれば、医療機関に相談したい。
消費者は適切に情報を収集し、冷静に行動する心がけが必要だ。