地価は地域活力のバロメーターといわれる。上昇に転じさせるには、広い県土全体の魅力を磨く施策が欠かせない。

 国土交通省が発表した2024年1月1日時点の公示地価は、全用途が全国平均で前年より2・3%上昇した。

 上昇は3年連続で、上昇幅はバブル経済期以降で最大を記録した。新型コロナウイルス禍が落ち着き、人の流れが活発になり、訪日客が増えたことなどが要因だ。

 一方、県内の全用途平均は0・5%下落した。29年連続だが、下落幅は0・2ポイント縮小した。3年連続の縮小となり、好転の兆しもうかがえる。

 県内の市町村では新潟市が唯一上昇した。前年より1・0%伸び、3年連続の上昇となった。

 JR新潟駅のリニューアル工事と並行して、駅周辺の再開発が進み、建て替えられたビルを中心に首都圏のIT企業などの進出が続いている。市や県による手厚い助成制度や誘致活動が奏功し、地価の上昇に表れたともいえる。

 長岡市でも大手通で、市が中心となって手がけた再開発ビル「ミライエ長岡」が昨年一部開業するなどし、下落幅が縮小した。

 ウイルス禍で疲弊したスノーリゾートなどの観光地の一部で持ち直しが見られた。湯沢町の商業地は横ばいになり、妙高市赤倉地区は下落幅が縮小した。

 トキエア就航や「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録への活動などを観光の追い風として訪日客を取り込めば、地価上昇につながる可能性もある。

 横ばいとなった聖籠町は、町の子育て支援策の効果もあった。

 懸念されるのは、新潟市と他の県内市町村との二極化だ。

 全用途平均の変動率は調査対象25市町村のうち、新潟市と聖籠町を除く23市町村が下落した。構造的な過疎化が要因で、持続可能な地域づくりを考えねばならない。

 今回の調査は元日に発生した能登半島地震を反映していない。今後、液状化被害などの影響を注視する必要がある。

 本州日本海側唯一の政令市である新潟市は上昇したとはいえ、近隣県の主要都市に比べ、力強さを欠いている。

 県内の最高価格地点は、新潟駅前の新潟市中央区東大通1で、1平方メートル当たり58万4千円だった。前年より4・8%上昇した。

 人気観光地の金沢市では最高価格地点は100万円を超える。

 次世代型路面電車(LRT)を整えた富山市は58万5千円と新潟市を上回り、5%以上の上昇だ。群馬県高崎市は51万円台で新潟市に約7万円差に迫る。変動率は7%以上も上昇している。

 新潟市には本県全体のけん引役が期待されている。都市間競争に負けぬように、官民でさらに知恵を絞りたい。