朝の通勤バス内、10秒おきくらいで鼻をすする音がする。きっとマスクを外し、思い切り鼻をかみたいのだろうな。目を赤くして、それを我慢している若い女性に同情したくなった。ウイルス禍の中、忌まわしい花粉症の本番到来である

▼本紙のスギ花粉予報も「多い」が急に増えた。昨年は花粉が飛散し始めたのが2月20日。今年は2月の冷え込みで3月9日と半月も遅れた。昨年の飛散量は少なかった。今年は例年並みだが、前年と比べた場合は「非常に多い」という

▼「杉にもマスクを」。本紙「ワンショット」に昨年投稿された患者の嘆きに膝を打った。「杉の木と男の子は育たない」。この時季は、新潟市に伝わる言い伝えが思い浮かぶ。信濃川河口が発祥の港町新潟は砂の上に築かれた。このため土の水持ちが悪く、杉の育成には不向きとされる

▼冗談交じりの言い回しだろうが、杉と並べられ、働き者の女性に比べられる男性陣もつらい。ただ、杉が育たないなら花粉症の患者も少ないのでは。勝手な解釈をする。だが、日本気象協会新潟支部の担当は「残念ながら」だ

▼スギ花粉は海岸部からの飛散が少なくても、内陸の里山から簡単に飛んでくる。南風の日は要注意。感染予防の密対策で換気が必要だが、招かぬ客も入る。ウイルスと花粉、あちらを立てればこちらが立たずのような

▼今年は3月の中下旬が飛散のピーク。労働条件を決める春闘の時期とも重なる。新潟市の桜の開花予想4月6日ごろまでは花粉とも春闘だ。

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