巨大IT企業が市場を独占すれば、消費者に不利益が生じかねない。公正な競争を確保するには一定の歯止めが必要だ。

 公正取引委員会は、米グーグルがLINEヤフーの検索連動型広告事業の一部を制限したとして、グーグルに初の行政処分を科す方針を固めた。

 グーグルは公取委の調査を受け、独禁法の確約手続き制度に基づき改善計画を提出した。

 公取委は改善計画に実効性があると評価し認める見込みだ。計画の認定は行政処分の一つとなり、グーグルに履行義務が生じる。

 圧倒的な技術力で市場の独占を狙う動きに、「ノー」を突き付けたといえよう。

 検索連動型広告は検索サイトで入力した語句に合わせた広告が示されるもので、広告主には費用対効果が高い。国内シェアはグーグルが7~8割で、ヤフーが追う。

 ヤフーは2010年からグーグルと提携し、スマートフォンなどのポータルサイトに検索連動型広告を配信していたものの、10年代半ばにグーグルから広告をやめるよう求められた。

 ヤフーが、グーグルの検索エンジンが使えなくなることを懸念し、要求をのまざるを得なかった構図が浮かぶ。

 公取委は、広告主の選択肢が狭まることでグーグルの寡占が一層進むと判断した。公正な競争原理を守る上で、妥当だろう。

 23年にも公取委はグーグルに関し、スマホ端末の初期設定で、スマホメーカーに対しグーグルのアプリストア搭載を認める代わりに自社の検索サービスを優遇させるなどした疑いがあるとし、独禁法違反の疑いで審査していた。

 グーグルは今回、既にヤフーへの要求を撤回している。公正な市場を維持していく責務があることを自覚してもらいたい。

 欧米の当局は、インターネット検索やオンライン広告、通販、基本ソフト(OS)、アプリ販売といったネット産業の基盤(プラットフォーム)を握る巨大ITへの監視を強めている。

 欧州では自社サービスの優遇を禁じる「デジタル市場法」が3月に全面適用された。

 巨大ITは資本力や技術力を背景に、さまざまな市場で利益独占を狙っている。

 日本も、巨大ITへの抑止力強化を図る姿勢が欠かせない。

 公取委は新たな巨大IT規制法案の今国会提出を目指している。巨大ITによるデジタル市場の寡占に風穴をあける狙いがある。アプリストアなどの運営を他事業者に開放するよう義務付ける。

 一方、新規参入で巨大ITが担ってきたセキュリティー機能が弱まるとの声もある。関係機関との連携を強め、懸念を払拭したい。スピード感を持って適切なルールを整備していかねばならない。