またも起きてしまった自衛隊機の重大事故だ。隊員の捜索と救助に全力を挙げるとともに、徹底的な原因究明が不可欠だ。再発防止策の実効性を高めてもらいたい。

 海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が20日深夜、伊豆諸島の鳥島東方海域で墜落した。

 計8人が搭乗しており、うち1人は死亡が確認され、7人は行方不明になっている。

 海自や海上保安庁などが捜索に当たっている。現場は水深が約5500メートルもあるなど困難が予想されるが、一刻も早い救助に力を尽くしてほしい。

 事故は、ヘリ6機と艦艇8隻で海自の潜水艦を探知する大規模な訓練中に起きた。

 防衛省は2機のフライトレコーダー(飛行記録装置)を回収し、解析を進めている。木原稔防衛相は22日の記者会見で「現時点で、飛行中の機体に異常を示すデータはなかった」と明らかにした。

 防衛省・海自は2機に「著しい近接」があり、空中で衝突した可能性が高いとみている。

 近接したヘリは互いに目視で位置を確認するが、夜間は機体に取り付けられたライトでしか判別できず、見えにくくなるという。

 海自では2021年7月に鹿児島県・奄美大島東方沖で訓練中のヘリ2機が接触する事故があり、その後、複数の航空機が展開する現場では、高度差を指示するなど再発防止策の徹底を打ち出した。

 21日に会見した海自トップは「再発防止策をしっかり守っていたら衝突は起こらない」と述べた。

 それなのに、どうして事故が起きてしまったのか。再発防止策はきちんと実行されてきたのか、疑問が生じる。

 訓練中の事故を未然に防ぐため、真に実効性のある再発防止策を強く求めたい。

 近年は中国など他国の潜水艦が日本周辺で確認されている。

 事故の背景には、現場部隊が中国への対処に追われ、基礎的な訓練が不足しているとの指摘がある。予算不足に伴う飛行時間の低下を挙げる声もある。

 海中の潜水艦を探知し、動向を探る対潜水艦戦で海自は「世界トップクラスの実力」だという。

 中国と台湾の緊張関係から有事に発展すれば、日米連携のために海自の能力がさらに重視される可能性が高い。

 自衛隊機の事故は海自以外でも相次いでいる。

 22年1月には航空自衛隊のF15戦闘機が石川県の小松基地を離陸した直後、洋上に墜落して2人が死亡した。23年4月には陸上自衛隊の哨戒ヘリが沖縄県宮古島付近で墜落し、搭乗していた10人全員が死亡する事故が起きた。

 事故を繰り返さないためにも、自衛隊全体で隊員の練度を維持、向上させる方策を真剣に考える必要がある。