日本のものづくりへの信頼を、大きく損なうことになりかねない。名門企業グループの長年にわたるデータ改ざんが、本県で行われていたことへの衝撃も大きい。
国内メーカーの不正が相次いでいる。「メード・イン・ジャパン」の価値を低下させないために、経済界全体で再発防止に努めなければならない。
IHIは24日、子会社のIHI原動機(東京)が船舶用や陸上用のエンジンの燃費に関するデータを改ざんしていたと発表した。
改ざんは、新潟内燃機工場(新潟市東区)と太田工場(群馬県太田市)の国内2工場で行われていた。データが確認できる2003年以降だけで、国内外に出荷された計4361台に上る。
新潟内燃機工場では、改ざんは1980年代後半から始まり40年近くも続いていた可能性がある。IHI原動機の前身の新潟鉄工所だった頃からで、前任者から口頭で引き継いでいたという。
太田工場では2001年から続いていたとみられる。不正は、企業風土として社員に染み込んでいたとも考えられ、問題は根深い。
IHIでは19年にも航空機エンジン部門で、社内規定で定めた資格を持たない従業員が検査をするという不正が発覚した。この不正を受けて始めた社員との対話で、今回の改ざんが判明した。
IHIの盛田英夫副社長は「ものづくりを担う企業としての根幹が問われる」と述べ、外部有識者らでつくる特別調査委員会を設け、関係者の処分などを決める。
改ざんが始まった経緯など事実関係の徹底的な調査が不可欠だ。
改ざんされたのは、試運転時の計測データで、納入する際に数値を良く見せたり、ばらつきを整えたりしていた。半数近くが顧客と定めた仕様を満たしていなかった。データは既に是正し、出荷は続けている。
納入先には、海上保安庁やJR北海道が含まれ、各都道府県が保有する漁業練習船にも搭載されたとみられる。
IHIは安全性への疑義は確認されていないと説明しているが、多数が利用する公共機関の乗り物も含まれ、心配だ。海外にも多く出荷しており、不信感がどこまで広がるかも懸念される。
国土交通省は全容解明と再発防止策の策定を指示した。25日は船舶安全法に基づき、両工場に立ち入り検査を実施した。IHIは顧客の不安払拭のため、早急に対策を示すことが必要だ。
国内メーカーでは、ここ数年だけでもダイハツのほか、日野自動車、豊田自動織機などで不正が判明している。海外からは日本のメーカーに対し、厳しい目が向けられているに違いない。
企業はガバナンス(企業統治)を徹底し、技術立国の自負を取り戻してもらいたい。