交流サイト(SNS)で、画像を無断に利用するなどして著名人に成り済ました偽の広告による「SNS型投資詐欺」の被害が拡大している。SNSの運営企業には、実効性のある対策を早急に講じるよう求めたい。
インスタグラムで見つけた投資を勧める広告にアクセスした茨城県の70歳の女性が、経済アナリストの森永卓郎氏をかたる通信アプリLINE(ライン)のアカウントで勧誘され、計約7億円をだまし取られた。
SNS型投資詐欺では、過去最多の被害額という。
佐渡市の70代男性も、著名人をかたる人物からSNSで投資話を持ちかけられ、約3600万円をだまし取られた。
フェイスブックやインスタグラムで衣料品販売大手ZOZO創業者の前沢友作氏らをかたる偽の投資広告を閲覧し、金銭をだまし取られた神戸市などの男女4人は、損害賠償を求め、SNSを運営する米メタの日本法人を提訴した。
広告内容が真実かどうかの調査を怠ったからだとしている。運営企業側に賠償を求める訴訟は初とみられる。
原告側は、メタ側が詐欺広告をチェックできていない甘さがあり、もっと早く対策していれば被害は生じなかったとしている。
被害急増の背景には、SNSやインターネット上で容易に投資できる環境が広がっていることもあるだろう。
SNSは今や日々の生活に欠かせないインフラの一つになりつつある。運営企業には責任の重さを認識してもらわねばならない。
メタは詐欺対策について「社会全体でのアプローチが必要だ」との声明を公表した。
しかし、当事者としての責任を感じる文章とは言い難い。
警察庁によると、2023年のSNS型投資詐欺の被害額は年間約277億9千万円に上る。昨年7月以降に被害が急増している。
今年1月に新たなNISA(少額投資非課税制度)が始まり、政府が「資産運用立国」を目指すなど、投資への社会的関心の高まりに犯罪グループが乗じている可能性がある。
SNSによる投資詐欺などに対応するため、政府は6月をめどに、総合的な犯罪対策プランを策定する方針だ。
自民党デジタル社会推進本部の担当者は「偽広告を除外する技術はほぼできているはずなのに(被害が減らない)状況が変わらない」と運営会社を批判し、法規制を視野に入れる。
運営企業に詐欺目的の広告のチェックを強化させるために、政府は対策を急ぐべきだ。
国民生活センターは「確実にもうかる話はない」と強調する。国民一人一人が「うまい話」に対し警戒する姿勢も欠かせない。