爽やかな季節を迎えている。新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行して間もなく1年、マスクをせずに屋外で過ごす子どもたちの表情が明るく見える。
きょうは「こどもの日」だ。全ての子の健やかな成長と幸せを社会で共に考え、支えたい。
少子化が急速に進む中、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」が発足して4月で1年がたった。昨年末には初の政策指針「こども大綱」を閣議決定した。
大綱は、子どもや若者を「権利の主体」と位置付けて意見を尊重し、社会全体で切れ目なく支えるとしている。
全ての子どもらが身体的、精神的、社会的に幸福な状態で生活できる社会を目指す。
1989年に国連総会で採択された「子どもの権利条約」の精神に基づくものだ。
大人と同じように、一人一人の人権を尊重する大切さを改めて認識し、子どもと向き合いたい。
注目したいのは、大綱が具体的な数値目標を明記した点だ。
「今の自分が好きだ」と思う子らの割合を2022年の60%から70%に、「自分の将来について明るい希望がある」と思う子らの割合を22年の66・4%から80%に、向上させるとしている。
これまでの各種調査で、日本の子どもは自己肯定感が低いと指摘されている。
いじめや自殺など、子どもたちを巡る問題は深刻だ。中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす子どもの貧困、大人に代わって家族の世話や家事を担う「ヤングケアラー」も課題となっている。
スポーツの場面では、指導者らによる暴力や暴言がなくならず、相談件数が増えている。
将来に明るい希望を感じられるようにするには、子どもたちにとって不幸な状況の解消に、社会全体で努める必要がある。
学校生活やスポーツの場をはじめ、子どもたちが伸び伸びと物事を楽しめる環境を、大人の側が整えていかなくてはならない。
子どもの権利条約を日本は1994年に批准し、30年になった。
近年、その理念を反映した条例を制定する動きが地方自治体で広がっている。NPO法人の調査では昨年5月時点で、22都道府県の64自治体が子どもの権利に関する総合条例を制定した。県内は新潟、上越両市が制定済みだ。
背景には、急速な人口減少が進んでいることへの危機感がある。地域が生き残るため、子どもたちに頑張ってもらうことで、元気を取り戻したいという自治体の思いがあると識者は分析している。
子どもを尊重する姿勢を条例で明確に示すことは意義がある。
全国では、条例を踏まえて子ども会議を設置し、子どもの意見を施策に反映させようとする動きもあるという。
形を整えるだけでなく、条例を積極的に活用してもらいたい。
子どもたちの存在は、未来への希望である。大人には子どもの幸せを支えていく責任があることを心したい。