「国内最大のスポーツの祭典」が曲がり角を迎えている。経費負担の重さなど運営にひずみが生じている。望ましい在り方について幅広い議論が求められる。

 都道府県の持ち回りで毎年開かれる国民スポーツ大会(旧国民体育大会)を巡り、見直しを求める意見が相次いでいる。

 既に昨年から全国知事会が見直しに乗り出しているが、会長の村井嘉浩宮城県知事が先月、「廃止も一つの考え方」と問題提起したことが発端だ。その後、各県知事も活発に発言している。

 課題に挙げられるのは、都道府県の財政負担の重さだ。2022年開催地の栃木県では経費が施設改修を含め約829億円に上った。選手の派遣費も都道府県負担で、1億円を超えることもある。

 開催費に国から補助が少ないと指摘する知事もいる。

 本県の花角英世知事は会見で廃止には慎重な立場を示しつつ、負担感は認め「どう改善できるのか、議論は当然」と語った。

 人口減少が深刻になり、多くの自治体が財政難に直面する中で、税金の使い道としての妥当性を思案することは理解できる。

 開催形式にも意見が出ている。実施頻度の見直しや広域開催への変更を求める知事もいる。

 有望選手が国際大会などを優先して出場しない近年の傾向や、冬季大会の開催地候補が少なくなっていることも問題視される。

 国、自治体と国スポを共催する日本スポーツ協会は、新たな検討部会を設置し、将来像を協議する方針だ。知事会は意見集約した上で協会との協議に入る。

 国スポの開催意義についても検討する必要があるだろう。

 旧国体は終戦翌年の1946年に始まった。荒廃した日本で、スポーツを通じて国民に勇気と希望を与えることを理念とした。

 かつては世界記録も生まれた。各地のインフラ整備にも寄与してきた。本県では64年と2009年に、2度の本大会が開催されている。

 大会は約80年にわたり多くの選手の目標にもなってきた。メジャーではない競技の関係者からは、国スポは貴重な活躍の場だとして存続を望む声が上がる。

 2巡目が終盤になり、35年から3巡目に入る。既に一定の役割を果たしたとの意見もある。

 スポーツを巡る環境や人口の変化などを踏まえつつ、意見を集約し方向性を示してほしい。