化石燃料からの脱却が図れるか期待したいが、日本の後ろ向きな姿勢が気になる。世界各地で異常気象が頻発し、温暖化対策は喫緊の課題だ。各国の早急な取り組みが欠かせない。
イタリアで開催された先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は、二酸化炭素(CO2)の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を2035年までに段階的に廃止することで合意し、共同声明を採択した。
G7の共同声明で、廃止年限の明記は初めてだ。昨年の札幌市での会合は、日本の反対で年限が示されず、踏み込み不足と批判されただけに一歩前進といえる。
石炭火力は高効率なタイプでも液化天然ガス(LNG)と比べCO2排出量は約2倍と多い。国際社会は撤退の流れが明確で、欧州を中心に全廃の機運が高い。
G7議長国のイタリアのほか英国、フランス、ドイツ、カナダが30年までに廃止し、米国は利用削減を支持する立場だ。昨年12月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)でも、「化石燃料からの脱却」で合意した。
懸念されるのは共同声明で、廃止時期に関し「産業革命以来の気温上昇を1・5度に抑える(パリ協定の)目標に沿った時間軸」との表現を併記したことだ。
廃止時期の明記に難色を示した日本の石炭火力継続への道を残した形だ。日本は独自の解釈で、火力発電の存続を図る構えでいる。
環境団体は、廃止対象発電所の条件に「排出削減対策が講じられていない」とある点についても「抜け穴」だと問題視している。
政府は燃焼時にCO2が出ないアンモニアなどを燃料に混ぜる実証段階の技術が、排出削減対策に当たると主張する。
だが、アンモニアの製造では多くのCO2が出る手法が主流で、排出削減効果は限定的だ。国際的な理解は広がってはいない。
日本の電源構成は、3割を石炭火力に頼り、現在の国のエネルギー基本計画では30年度時点でも2割を見込む。
再生可能エネルギーや原子力など「脱炭素電源」を30年度に約6割に高める目標だが、22年度実績は約27%と半分以下だった。
世界気象機関は、23年の世界の平均気温は産業革命前から約1・45度高かったとの報告書を示した。パリ協定の目指す気温の抑制幅1・5度が間近に迫っている。
脱炭素の動きを強化しなければならないことは明白だ。
原発には、安全性への懸念や放射性廃棄物の処分問題などがある。政府は、石炭火力を再エネに置き換える施策の推進に力を注ぐべきだろう。
国のエネルギー基本計画の見直し議論が今月中にも始まる。共同声明の内容が、議論にしっかりと反映されるか目を凝らしたい。