新型コロナウイルス禍の非常時だったとはいえ、公金注入の妥当性が疑われることは見過ごせない。巨額予算を計上した政府と、事業を実施した自治体は、政策効果を徹底的に検証するべきだ。
ウイルス対策として政府が2020年度補正予算以降、計18兆円超を計上し、自治体向けに設けた地方創生臨時交付金を活用した事業で、政策効果に疑問符が付く事例が次々と明らかになった。
臨時交付金は、配分された上限の範囲で自治体が政府に事業計画を申請する仕組みで、感染防止策や医療体制強化、地域経済活性化などに幅広く使われた。
しかし、福島県白河市では、臨時交付金約1億6千万円を用いて整備したテレワーク用施設で、共用の仕事場であるコワーキングスペースの利用者数が1日一桁台にとどまっている。
新型ウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行し、地方では出勤が当たり前になった影響があると考えられる。5類に移行して8日で1年となり、今後も有効に施設が使われるかは見通せない。
山梨県はファッションイベントの関連行事を開くため、6千万円規模の臨時交付金を使った。旅行促進を通じた経済活性化などが狙いだったとしていたが、来場者数は目標を下回った。似たような事例は全国各地にあるとみられる。
婚活イベントのほか、観光地や名産品に関する知識を問う検定などウイルス対策とは関連が低い行事への支出も判明している。
事前に使途が適切かどうか十分に論議されたのか疑問だ。
他の自治体事業を模倣した事例も多く、ニーズに合った施策になっていないとの見方がある。
各自治体の政策企画力が不十分だとも指摘され、人材育成をどう進めるか考える必要があろう。
臨時交付金を巡っては、自治体によるマスクなどの配布事業で多くが使われないままになっていたことが、会計検査院の調査で判明している。配布先の意向を把握していなかったことなどが原因だ。
オンライン授業などに使う端末の購入事業では、100億円以上が翌年度以降の端末保守費などに充てられていた。保守費が対象経費に含まれるか不明確だった。
政府の制度設計の甘さがこうした事態を招いた面は否めない。
政府は機動的なウイルス対策とするため、予備費から臨時交付金の多くを支出してきた。
だが、予備費は使途を閣議だけで決められ、国会のチェックが入りにくい。財源の在り方についても議論が必要だ。
臨時交付金の事業に関し、政府は自治体に効果検証を求めている。一方、自治体からは、効果を定量的に示す困難さや、検証基準の明確化を求める声が上がる。
政府と自治体はしっかりと協議していかねばならない。