首相がとりまとめを強く促したにもかかわらず、改革への本気度が依然、感じられない案だ。政治資金の透明化を図るには極めて曖昧で、不十分な内容だと言わざるを得ない。
自民、公明両党の幹事長が、派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた政治資金規正法改正の与党案に大筋合意した。来週中に党内手続きと条文化を進め、野党側に提示する。
焦点だったパーティー券購入者名の公開基準は、現行の「20万円超」から引き下げることを改正案に盛り込むが、具体的な額は明示しなかった。
協議で公明が「5万円超」を要求したのに対し、自民は「10万円超が限界」と譲らなかった。
引き下げ過ぎると、公開を敬遠する企業・団体による買い渋りが起きることへの自民の懸念が背景にあるとみられる。
政策活動費については、政党から支払いを受けた政治家が使途を報告し、党が政治資金収支報告書に記載するとした。
課題に挙げただけだった自民案に比べ、一歩前進したともいえるが、使途をどこまで報告するのか分からず、詳細な制度設計はできていない。
生煮えの感は否めず、国民の理解が得られるのか甚だ疑問だ。
野党が禁止を主張する企業・団体献金には言及しなかった。
後援会など「その他の政治団体」の透明性確保では、「国会議員関係政治団体」から寄付を受けた場合、国会議員関係政治団体と同等に支出を公開させるとした。ただし「年間1千万円以上移動させた場合」との縛りを付けた。
政治活動の自由を確保するとの理由から、政治資金の透明化をなるべく限定しようとする自民の後ろ向きな姿勢が目立った。
しかし、本来なら自民が率先して、法改正に取り組まねばならないはずだ。
立憲民主党など野党は既に党の案を示しており、与党案の早期提示を要請していた。
岸田文雄首相は、大型連休中の外遊から帰国した6日、自民の実務者を呼び作業の加速化を指示、翌7日には自民幹部に週内の策定を念押しするなど、もたつく党側の尻をたたいた。
先月末の衆院3補選全敗の危機感があったのだろう。
与党案は、自公の主張の隔たりが埋まらないまま、日程ありきで妥協したのが実情といえる。
立民は与党案を「抜け道だらけで論外」と批判しており、抜本改革を求める野党案との隔たりは大きい。政治改革特別委員会の審議は難航が予想される。
政治への信頼回復は、政界全体の課題である。与野党は前向きに議論を尽くして、国民の信頼を得られるように改革を成し遂げねばならない。