高校球児の躍動する姿を、お茶の間で観戦できる季節となった。今年の春夏の甲子園大会から新ルールが導入される。天候不良で試合が中断した場合、翌日以降に中断時点から試合を再開する「継続試合」である
▼画期的な転換ともいえ、降り続く雨によるコールドゲームなどがなくなる。悪天候が続いた昨年夏の大会では、実力校同士の対戦が八回途中で降雨コールドに。打者が振ったバットがすっぽ抜けるなど危険な場面もあった。導入を決めた日本高野連は「近年の気象状況の変化などを考慮した」と説明している
▼雨に泣く球児の姿は胸を打つのか、かつては詩も生まれた。〈きみたちは/甲子園に一イニングの貸しがある/そして/青空と太陽の貸しもある〉。1988年、八回途中に降雨コールドで幕を閉じた岩手県立高田対滝川二(兵庫)の試合を作詞家の阿久悠さんが観戦し、1イニングを残して去った高田ナインに思いを寄せて書いた
▼阿久さんの詩を刻んだ石碑が高田高の敷地にある。東日本大震災でも損壊を免れた。後輩らは「貸し」を取り返すために再度甲子園へ、と毎年の県大会を戦い続けているという
▼継続試合になったら。いろいろ想像を巡らせる。夜のミーティングで作戦を練り直したチームの逆転はあるか。勝利を意識しすぎた投手が一夜明けて打ち込まれることは…
▼球児には青空と太陽の下でプレーしてほしいが、中断を挟んだ試合がどう展開するかも興味深い。新たなドラマが生まれるかもしれない。