訪日客が好調だ。増加すれば、地域経済への波及効果を期待できる。本県も取り込めるように、魅力ある観光地域づくりに向けて知恵を絞りたい。
政府観光局は、4月に日本を訪れた外国人客は前年同月比56・1%増の推計304万2900人だったと発表した。
単月では最多だった3月の308万人に次ぐ高水準で、2カ月連続の300万人超えとなった。
最大の要因は円相場だ。歴史的な円安で、旅行費を他国より割安に抑えられるためだ。
年間での過去最多3188万人を記録した2019年は1ドル=110円前後だったが、23年6月ごろから、おおむね140~150円台で推移している。
訪日客が増えると、宿泊施設や飲食店、空港、レンタカー取扱店などの関連産業が潤い、消費や雇用も増える可能性がある。
気になるのは、恩恵が三大都市圏などに集中し、本県など大半の地方に行き渡っていないことだ。
観光庁によると、23年4~12月の訪日客の宿泊や飲食などの消費額は、1兆5千億円台の東京をはじめ6都道府県で1千億円を超えた。だが58億円の本県など23県は100億円に満たなかった。
23年の外国人延べ宿泊者数は全国で1億1434万人だった。本県は35万人だった。
本県には伸びしろがあり、工夫次第では、東京から近距離の人気旅行先にもなり得る。
鍵を握るのは、本県ならではの体験型コンテンツだ。滞在時間が長くなり、消費額の増加が期待できる。スキーやトレッキングなどの自然体験、伝統工芸品づくりなどの作業体験もいいだろう。
雪を含めた四季折々の風景、米どころならではの食事や酒などのアピールも重要だ。
温泉地も他地域との差別化を図るには、特色や歴史などの「物語性」が必要だ。外国人にも伝わるような取り組みが欠かせない。
23年度の新潟空港の利用者数は105万6208人で、4年ぶりに100万人を超えた。19年度比92・8%と、新型コロナウイルス禍以前の水準に回復しつつある。
国際定期路線も再開した。5万2994人となった国際線利用者は、回復途上の中国線が増便されれば一層伸びる可能性がある。さらなる利用促進に努めたい。
訪日客の急回復などで京都市や神奈川県鎌倉市といった観光地は混雑している。騒音やごみのポイ捨てなどで環境や住民生活に悪影響が出ている地域もあるという。
佐渡市は、「佐渡島(さど)の金山」が、世界文化遺産登録された場合を想定し、観光客対応などに充てる財源確保策として法定外目的税の宿泊税の導入を検討中だ。
観光客と住民の双方が満足できるように、地域の実情を踏まえた対策を考えておきたい。