政治とカネの問題を払拭してもらいたい。国民が望むのはそのことだ。自民党の改正案で実現できるとは到底思えない。政治不信はさらに広がる恐れがある。
岸田文雄首相をはじめ自民は危機感を持って臨まねばならない。
自民派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた各党の政治資金規正法改正案の審議が22日、衆院政治改革特別委員会で始まる。
自民は公明党と与党案で大筋合意はしたが、政策活動費の使途公開などで溝が埋まらず、単独での提出となった。重要法案で自公の足並みがそろわないまま審議入りする異例の事態だ。
パーティー券購入者名の公開基準額について、公明が現行の「20万円超」から「5万円超」への引き下げを求めたのに対し、自民は「10万円超」を譲らなかった。
政策活動費については、明細書作成の義務付けを求める公明に対し、自民は50万円を超える支出に使途の項目を報告させるとした。
立憲民主党と国民民主党は政策活動費を禁止し、政治家が連帯責任を負う「連座制」の導入などからなる改正案を共同提出した。
立民はパーティー開催を禁止する別の法案も単独で提出した。日本維新の会や共産党は、企業・団体によるパーティー券購入禁止などを訴えている。
いずれも自民より踏み込んでおり、自民案の甘さが浮き彫りになっている。
自民は参院で過半数に達していないため、今国会での成立には公明を説得するか、与野党修正協議に応じざるを得ない状況にある。
そうであるならば、なぜ率先して抜け道のない、透明性の高い改正案をまとめようとしないのか。
20日の衆院予算委員会で岸田首相は企業・団体献金について、「禁止するのでなく透明度を上げるべきだ」として野党の禁止要求を拒否した。
政策活動費の領収書公開は「個人のプライバシーや企業の営業秘密」を理由に慎重姿勢を見せた。
こうした説明や姿勢で国民が納得できるだろうか。
時事通信の世論調査では、政治資金規正法改正などを巡る首相の対応を「評価しない」は72・9%に上った。
この間の後手後手の対応が、国民の政治不信に拍車をかけていることを首相は認識すべきだ。
自民執行部が13日に新潟市で開いた「車座対話」では、地元県議から「コアな支持者が離れている」「もう一度政権交代しろという声がある」と厳しい意見が相次いで上がった。
現場の声をしっかり受け止め、政治改革に反映させることが何より大事なはずだ。
そもそも裏金事件は全容が解明されていない。事件の核心をうやむやにしたまま、弥縫(びほう)策で乗り切れるような問題ではない。