一生のお願いって、皆さんはどんなことが思いつきますか?

 「一生のお願い! 彼に告白するときに付いてきて」などであればかわいいお願いだなぁと思えるのですが...。友人から頼まれた、まさかの一生のお願い、それは。

 2018年10月。出産予定日を過ぎても、まったくおなかから出てくる気配のないわが子。このまま陣痛を待っているだけでは、おなかの中で大きくなり過ぎて、自然分娩(ぶんべん)できないかもしれない可能性もあったので、計画入院することに。

 病室に案内され、陣痛誘発の説明を聞き、何とも言えない不安の渦に吸い込まれそうになっていた、その時。コンコンコン、と病室のドアをノックする音。重々しくドアを開けると、見慣れた顔。

 「ほ、ほんとうに来たんだね」

 そこには、名古屋から駆けつけた友人の姿が。そう、友人のまさかの一生のお願いは、「出産に立ち会わせて」だったのです。

出産直後の1枚。駆けつけた友人2人と。新潟市の病院にて

 今思い返しても、信じられないようなお願いです。でも、当の本人は真剣なまなざし。そう、本気と書いてマジだったのです。

 当初、私は病院側から許可をもらえなかったという理由で断ろうと思っていましたが、まさかの「良いですよー。この間もお友達6人くらい来た方もいますから」という助産師さんの返答。ウイルス禍の前ではありましたが、それでも質問した私の方がびっくりしてしまう寛容な対応でした。まさかまさかの連続すぎて、もう腹をくくるしかない状況に。

 そんな前段があり、意気揚々とやってきた友人。しかも何を思ったか、自慢げにバッグからゴルフボールを取り出し、「陣痛がきたら、これでお尻をさするんでしょ?」と。

 いやいや...それはテニスボールでしょ!とすかさずツッコミを入れておきました。

 その後、陣痛が起きたときに、試しにゴルフボールを使ってみましたが、小さいし、硬すぎるし、5秒で却下。

 そんな少し天然な友人A、急きょ駆けつけた友人B、そして主人にサポートしてもらいながら、8時間に及ぶ初めてのお産を経験しました。

 ただでさえ、主人に立ち会ってもらうだけでも恥ずかしさを伴うのに、友人が2人もいるというのは、当事者である私も驚きの光景でした。

 しかし、立ち会ってもらったことにより、思った以上にお産に対して冷静になった自分もいて、ほとんど声を出さずに陣痛を耐え、集中力を高めることができました。「出産は生放送だ! 時間が来れば必ず終わる!」と、頭の中で自分を鼓舞し、痛みも出血多量も気合で乗り切りました。

出産直後の一枚。"出血多量"で顔色が悪いですが、達成感でいっぱいでした

 友人の枠を超えた存在の彼女たちだったからこそ、恥ずかしさよりも心強さが勝り、とても良い思い出になったのだと思います。

 先生や助産師さん、そして友人や夫...たくさんの人に囲まれて産声をあげた息子。大きくなったら、あの日の「一生のお願い」のことを教えてあげようと思います。そして、これからも人に恵まれる人生を歩んでほしいと願う母でした。
(フリーアナウンサー)

<ほんだ・ともこ>
1983年生まれ。愛媛県出身。立教大を卒業後、2006年にフジテレビに入社し、「すぽると!」などを担当。13年に、上越市出身でプロバスケットボール選手の五十嵐圭選手と結婚し、退社。現在、フリーアナウンサー。
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