先細りしている皇族数の確保に方向性を示すことは、安定的な皇位継承策と切り離せない課題である。国会は見解の一致を図れるよう、丁寧な議論に努めてほしい。

 皇室の課題に関する衆参両院の各党派代表者会議が先月、2年4カ月ぶりに始まった。

 皇族数確保が主要な論点で、政府有識者会議が2021年12月に答申した「女性皇族が婚姻後も皇族の身分保持」と、「養子縁組による旧皇族男系男子の皇族復帰」の2案が軸となる。

 自民党は皇族数確保の必要性に関し「多くの党派の考え方に隔たりはない」と、早期に結論を得るべきだと主張した。2案を国民の理解を得られる方策とした。

 しかし、立憲民主党と個別の論点で溝が埋まっておらず、見解が一致できるか見通せない。

 その一つは、女性皇族が婚姻後に皇族身分を保持する場合、配偶者や子の身分をどうするかだ。

 自民は答申に沿い、配偶者や子は「皇族の身分を有することなく、一般国民としての権利・義務を保持するのが適切だ」とする。

 これに対し立民は、配偶者と子に皇族身分を付与する案も検討すべきだと提案している。

 皇室典範は「皇位は皇統に属する男系男子が継承する」と規定し、女性とその子どもの「女系」皇族には認めていない。

 答申が、皇族身分を有しないとしたのは、女性皇族が皇族以外の男性と結婚して生まれた子が皇位を継ぐ「女系天皇」につながることへの懸念があるためだ。

 皇室を巡る議論は政争の対象とせず「静謐(せいひつ)な環境」で行われるべきだとされるが、政治資金規正法改正などで与野党対立が激しい中、平穏に議論できるか微妙だ。

 皇位継承策については、05年に女性・女系天皇を容認する方向性が示されたが、06年の秋篠宮家長男悠仁さま誕生で見送られた。

 旧民主党政権下の12年には、女性皇族が婚姻後も皇室にとどまる「女性宮家」創設を柱とする論点整理が示されたものの、再び自民に政権交代し、男系男子にこだわりが強い安倍晋三氏が首相に返り咲くと、議論は下火になった。

 菅政権になり政府は有識者会議を設置したが、岸田政権でも議論は深まっていない。上皇さまの天皇退位から5年が経過している。

 共同通信社の3~4月の世論調査では、皇位継承の安定性について「危機感を感じる」が「ある程度」を含め72%に上った。

 女性天皇を認めることには「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合わせて90%が賛同し、女系天皇についても「どちらかといえば」を含め84%が賛成した。

 現在、未婚の皇族方のうち、悠仁さまを除く5人は全員女性だ。

 皇位継承の安定性を国民は気にかけていることを、政府と国会は胸に留めて議論してもらいたい。