雪割草の群生地を巡るスタンプラリー「えちご雪割草街道」の案内記事に誘われて、長岡市(旧和島村)の妙法寺を先日訪ねた。境内の裏山は歩きやすいように山道が整備され、その両側に「春の妖精」が咲く。いまが見頃だそうだ
▼一帯は鎌倉時代の築城とされる村岡城址(じょうし)が望め、約750年前に日蓮が佐渡に流された際に歩いたと伝わる道も続く。その先には出雲崎。日本海から吹く春風が気持ちいい
▼妙法寺は昨年、雪割草街道の四つ目の会場として加わった。県内の群生地の中には花を移植して育てている例もあるが、妙法寺の裏山は自生しているのが特徴だ
▼住職の小林日元さん(73)によると、地元では当初、雪割草街道に参加して広く知られることに慎重な声もあった。付近の山はかつて雪割草が至るところ咲いていた。ところが山野草ブームで売買の対象になり、姿がすっかり減ってしまった。苦い教訓だった
▼小林さんは約4千人が訪れた昨年を振り返り「やはり、人が来てくれる寺がいい。地元の活性化にもつながる。心配したほど荒らされることもありませんでした」と笑顔を見せる。寺一帯が自生地の保護と地域の活性化を両立するモデルケースになるといい
▼雪割草街道の来訪者は、自然の中で感染リスクが少ない安心感もあり、この2年増加しているという。会場の一つ、長岡市の雪国植物園にはこんな看板が立つ。「とって良いのは写真だけ 残して良いのは足跡だけ」。マナーを守り「春の祭典」を楽しみたい。