世界遺産に値する価値があると認められたものの、登録へは課題が残ることが示された。来月には吉報がもたらされるよう、政府や県、佐渡市は登録へ向けた取り組みを着実に進めてもらいたい。
世界文化遺産登録を目指している「佐渡島(さど)の金山」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)は、推薦した日本に、遺産の価値の補足説明を求める「情報照会」を勧告した。
勧告区分は4段階あり、情報照会は「登録」に次いで2番目の評価になる。
登録と勧告されなかったことは残念だが、近年は最終判断をするユネスコ世界遺産委員会で、勧告を覆し登録された例は多い。昨年は情報照会勧告を受けた全6件が登録に格上げされた。
文化庁が、来月21日からインドで開かれる委員会で登録を目指すとしたのは当然だ。
ただ、委員会でも情報照会と決議されれば、登録は来年以降になる。限られた時間の中で、政府は委員国メンバーの理解を得られるよう全力を挙げねばならない。
佐渡島の金山は、「相川鶴子金銀山」と「西三川砂金山」の二つの鉱山遺跡で構成する。江戸時代まで手作業で採掘、製錬し、17世紀には質・量とも世界最高水準の金の生産を誇った。
勧告は「他地域で機械化が導入された時期に、完成された手作業による採鉱と製錬技術を継続したアジアにおける他に例を見ない」とし、「世界遺産登録へ考慮に値する価値を有する」と評価した。
世界に誇れる資産だと認められたことは、喜ばしい。
課題は、江戸期より後の遺跡が大部分を占める相川の北沢地区を除外するなど、資産範囲の修正を求められたことだ。
さらに追加的勧告では「資産に関する全体の歴史を包括的に扱う説明・展示戦略を策定し、施設・設備を整えること」とした。
佐渡金山を巡っては、韓国が戦時中に朝鮮半島出身者の強制労働があったとして反発し、韓国国会では申請撤回を求める決議案が可決された経緯がある。
尹錫悦(ユンソンニョル)政権で日韓関係が改善し、今年4月に駐日大使が「登録に絶対反対ではない」と述べた。一方で、朝鮮半島出身者が働いていたことを含む全体の歴史を説明することも要請している。
登録の可否を決める委員会は、紛糾すれば採決を行うこともあるが全会一致が原則だ。委員国には韓国も含まれ、評価されるためのさらなる努力が不可欠だ。
林芳正官房長官は会見で、「韓国とは引き続き丁寧に議論する」と述べた。
佐渡島民をはじめ県民の政府に寄せる期待は大きい。地元の人たちも登録への機運を一層盛り上げ、歓喜あふれる夏を迎えたい。