地方の人口は減り続け、東京一極集中は止まらない。地方の衰退は国力の低下につながる。

 政府はこれまでの施策を十分に検証し、次の効果的な取り組みにつなげてほしい。地方の側も知恵と行動力で活性化を図らなければならない。

 政府が取り組んできた「地方創生」の10年間の成果や課題を検証した報告書が発表された。

 報告書は地方への移住者増加など一定の成果はあったとしつつ、「人口減少や東京圏への一極集中の大きな流れを変えるに至らず、厳しい状況にある」と総括した。

 地方創生は、第2次安倍政権が2014年に看板政策として打ち出した。移住・定住支援などを掲げ、自治体に交付金を配るなどして推進してきた。

 しかし日本の総人口は13年連続で減少し、特に地方の減少は著しい。本県は26年連続で減り、この10年で県人口は約20万人減って約210万人になった。

 一方で東京圏では人口流入が続いている。転入者が転出者を上回る転入超過数は新型コロナウイルス禍で一時減少したものの、22年に再び増加に転じ、23年は約11万5千人に上った。

 政府がこの間、手がけてきた地方創生関連の取り組みは、移住支援や企業の地方移転促進、政府機関の移転、子育て支援など幅広く、投じてきた予算も多い。

 自治体に配分した関連の交付金は年1千億~2千億円に上るが、政策効果が不十分な「ばらまき」との指摘もある。

 この10年の政府の取り組みについて、ある首長は「地方が人口減少に苦しむ状況はまったく改善していない」と批判する。本県の花角英世知事も深刻な人口減などを踏まえ「成果としては物足りない」と述べた。

 政府の報告書は、十分な成果が出なかった要因の分析には踏み込まなかった。しかし今後より有効な施策を展開するためには、しっかりした検証が不可欠だ。

 報告書は今後の取り組みの方向として、地方移住や企業移転、地方大学・高校の魅力向上などを進めるとし、女性や若者の視点から働きやすく、暮らしやすい地域づくりの検討などを挙げた。

 24年の経済財政運営指針・骨太方針案でも「地方創生の新展開を図る」とうたった。

 岸田文雄首相は地方創生に関心が薄いといわれているが、地方の現状を見つめて危機感と責任感を持って対応してもらいたい。

 少子化対策など自治体の努力だけでは困難な課題もある。だが地方創生を実行するのはあくまでも地方の自治体だ。地域交通整備や子育て環境整備などを進め成果を上げている自治体もある。

 それぞれが政策の企画立案力を磨き、成果につながる施策を展開してほしい。