「抜け道」だらけと言わざるを得ない。抜本的な改革を望んだ国民の思いとは程遠い。政治不信は募るばかりだ。
派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け自民党が提出した改正政治資金規正法が19日、参院本会議で可決、成立した。
これまで「20万円超」としていたパーティー券購入者名の公開基準を「5万円超」に引き下げる。
「いわゆる連座制」として政治資金収支報告書の「確認書」交付を国会議員に義務付ける。
使途報告義務がなく、かねて不透明さが問題視されてきた政策活動費については、支出の項目別金額と「年月」を報告させる。10年後に領収書を公開し、監査する第三者機関を設置する。
一歩進んだとは言えるが、抜け道が多くあり、実効性に疑問が残る内容だ。
「いわゆる連座制」については、「会計責任者がうそをついたことにすれば逃げられる」と指摘されている。厳罰化によって、立件のハードルがむしろ上がったとの見方もある。
政策活動費の領収書公開や第三者機関については、詳細は今後の検討事項とした。領収書に関して自民の実務者は「原則公開だが、場合によってなじまないものも当然考え得る」と述べており、公開時に黒塗りとなる余地がある。
企業・団体献金やパーティーの禁止には踏み込んでいない。
改正規正法は自民が公明党、日本維新の会と修正協議を重ねて法案を作ったが、当初から自民の腰が引けていたのは明らかだ。
衆院で賛成した維新は参院では反対した。党首間で合意した調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の今国会での改革をほごにされたと反発したためで、最後まで右往左往した印象を残した。
この間の混乱と改正法の中身を見ると、裏金事件で失った信頼を回復するための政治改革が、信頼を失墜させる結果になっている。
改正法成立後の19日午後には、岸田文雄首相にとって初めての党首討論が行われた。
野党の党首は改正法について、「国民は評価しない」「裏金事件を起こした自民党はもっと厳しい改革案を出すべきだった」「ザル法だ」と批判した。
これに岸田首相は「政策活動費は透明性を高め、二重三重の仕掛けで制度をつくった」「お金がない若者も政治を志すことのできる現実的な政治資金の在り方を考えた」などと応じたが、国民の共感を得られたかは疑わしい。
改正法は成立したものの、これで終わりではない。
政治資金の透明化に向け、残された問題、先送りされた課題に早急に対応しなければ、政治不信は解消されない。同時に「カネ」を必要とする政治の在り方を見直していかなければならない。