統率力を欠いた政権が、混乱を拡大させた国会だった。自浄能力を発揮できず、政治不信を深めさせた責任は重い。

 政治とカネが主要な議題となった通常国会が23日、閉幕する。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受けた対応が最大の焦点となった。注目された改正政治資金規正法は、野党が一致して反発する中、与党で成立させた。

 しかし「抜け穴」が多い上、政策活動費を監査する第三者機関の具体化や、調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途透明化が課題として残り、不信感を募らせたことは否定できない。

 会期を延長して内容を詰め、実効性を高めることもできたはずだが、岸田政権はその努力もしなかった。改正法成立で問題に幕引きを図りたい思惑なのだろう。

 国会審議が、疑惑解明の場にならなかったことも落胆を招いた。

 衆参両院の政治倫理審査会は、安倍派で資金還流が再開された経緯を追及し、還流の協議に出席した派閥幹部4人が「協議で結論は出なかった」と明言した。

 しかし規正法違反(虚偽記入)の罪に問われた派閥事務局長は今月の公判で、この幹部4人が判断して再開が決まったと明かした。

 政倫審の証言と食い違い、改めて幹部らの説明責任が問われる。

 衆参両院の政倫審は、裏金事件の弁明をしていない自民議員計73人に出席を求めたが、一人も応じなかった。このまま裏金問題の幕を引くことは許されない。

 出席に強制力がなく、虚偽の証言をしても罪に問われない政倫審の在り方を見直す必要もある。

 一方で、今国会では重要法案が多く両院を通過し、政府提出法案62本のうち61本が成立した。

 公的医療保険料に上乗せして徴収する「子ども・子育て支援金」を創設する少子化対策関連法や、離婚後の共同親権を選べるようにする民法改正が成立した。

 機密情報の保全対象を経済安全保障分野に広げ、国が認めた人のみが情報を扱うセキュリティー・クリアランス(適性評価)制度を導入する新法「重要経済安保情報保護・活用法」などもある。

 ただ、政治とカネに焦点が当たるあまり、国民の権利やプライバシーに関わる改正や、国民負担を伴う重要法案で、議論が尽くされなかった印象がある。

 岸田文雄首相は、国会閉幕に合わせた記者会見で、裏金事件を巡り「私自身が一歩前に出るとの思いで、派閥解消や衆院政倫審への出席などを決断した」と振り返った。今後も先送りできない課題に結果を出すと強調した。

 しかし今、首相に対し、国会議員や自民の地方組織から責任論や退陣要求が公然と上がっている。

 首相が党内を統制できていないことは明らかだ。このままでは国のかじ取りを任せられない。