北陸道の栄スマートインターチェンジ周辺に造成された工業流通団地=三条市福島新田
北陸道の栄スマートインターチェンジ周辺に造成された工業流通団地=三条市福島新田

 新潟県三条市栄地域の工業流通団地で、企業へ土地を分譲する際の契約に「使用貸借」が使われている。親族間で土地などを無償で貸し借りする場合に一般的な契約だ。県央地域の不動産事業者から、企業を相手にした契約において適切なのか疑問視する声が新潟日報社の「もっとあなたに特別報道班」(もあ特)へ寄せられた。企業へ土地を無償で貸すための契約形態として問題はないのか、調べてみた。(三条総局・黒島亮)

 団地は三条市が県央土地開発公社へ依頼して分譲している。進出する企業に対し、土地代金支払いを猶予する制度があり、最長5年は支払いを猶予できる。この期間の契約形態として使用貸借を利用できる。市は、対企業に使用貸借をしても法的に問題はないとしており、これまでに進出企業の一部が利用しているという。

 ただ、市も「行政や公社と企業が使用貸借を行うのは珍しい」(商工課)との認識を示す。その上で、「きちんと契約を結んでおり、期限があり、違約金が発生することなどもはっきりと取り決めている」と説明する。使用貸借によって無償で貸与しても特段のデメリットはないという。

 だが、過去には県内でも、行政と事業者の間でトラブルとなった事例がある。

 新潟市では事業者と土地の使用貸借契約を締結して下水道管を埋設。1970年代後半に下水道管は不要になったが、撤去の責任について市とこの事業者双方の主張が食い違い、放置された。その後、廃管の存在を知らずに家を建てた住民らの訴えに対し、東京高裁は2011年、市と分譲事業者が和解金を支払うよう和解を勧告した。

 もあ特へ疑問を寄せた不動産事業者は、工業流通団地の用地について、使用貸借を使わなくても、企業が費用を支払うまで予約の形にするなどの対応方法があると指摘。「使用貸借は責任が曖昧になるリスクがあり、親族のような特別な信頼関係があるわけでない対企業の契約には望ましくない。通常の契約にするべきだ」と語る。