元日に甚大な被害をもたらした地震の被災地では、半年が過ぎてもなお深刻な状況が続いている。
避難生活で命を落とす人が増えた。倒壊した建物などが手つかずのまま残されている地域もある。住宅の再建やインフラ復旧の遅れが、目に付く。
能登半島地震は1日で発生から半年になった。死者は299人となり、うち52人は避難生活で体調を崩すなどして亡くなる災害関連死と正式に認定され、18人の認定も決まっている。
仮設住宅の建設が遅れ、損壊建物の解体も進まない。今も2288人の避難者がいる。壊れた自宅などで暮らす人もいる。
夏本番となれば熱中症リスクが高まる。避難生活が長引けば、関連死がさらに増える恐れがある。高齢者や障害者らの体調悪化が心配だ。
過去の災害では、時間の経過とともに経済的困窮などが重なり、うつ状態になる被災者も出た。メンタル面のケアにも力を注ぐ必要がある。
◆断水が続くエリアも
インフラ全般の復旧が遅い。背景には、物資搬入などで要となる道路の復旧が十分に進んでいないことがある。
半島の主要道、国道249号は大規模な土砂崩れなどで全線開通の見通しが立っていない。
上下水道の被害も甚大だった。輪島市と珠洲市では今も一部エリアで断水解消のめどが立たないことに苦悩している。
仮設住宅の建設も思うようには進んでいない。
珠洲市では6月上旬時点で完成したのは必要戸数の半分強だ。石川県は8月中の希望者全員の入居を目指すとするが、間に合うのか気がかりだ。
建物の公費解体・撤去がはかどらず、壊れた家屋やがれきが地震直後とほぼ変わらぬ状態で残っている地域もある。
石川県は、公費解体が必要な総数を2万2千棟と想定し、来年10月までの完了を目指すとするが、現時点で完了しているのは4%にとどまっているという。被災した市町からは県の目標に懐疑的な声が出ている。
手続きに時間を要し、発注が遅れているほか、人手不足で作業員の態勢が整っていないことが大きい。家屋の罹災(りさい)証明の判定方法が分かりにくいといった指摘もある。
公費解体では自治体がいったん費用を立て替えるが、資金繰りが厳しく、国は概算払いで早く渡してほしいと言う首長もいる。被災地の実情を踏まえ、国は柔軟に対応するべきだ。
地震以前から人口減と高齢化が深刻な能登半島では、なりわい再建も急務だ。雇用がなければ、子育て世代をはじめとする人口流出を食い止めることが一層難しくなるからだ。
被災地の首長によると、あらゆる業種で廃業が増えたという。別の首長は、補助金があっても再建には自己資金が必要になるため、若い人でも再建するかどうか悩んでいるケースがあると打ち明ける。
海底隆起などの被害が出た輪島港は今夏中にも操業を再開できる見通しになったが、機能回復できていない漁港は複数ある。漁業や農業など各分野の産業振興に向けて知恵を絞り、支えていきたい。
観光は経済波及効果が高い産業で、早期再開に向けて後押しする施策が求められる。
東日本大震災や熊本地震など、過去に大災害に見舞われた地域では、商店街が核となって復興に向かったケースもある。
店が開けば人が集まる。商店街の再建を応援していきたい。
今回の地震では、総額540億円の復興基金を創設した。国の事業などでカバーできない部分を補い、支援する仕組みだ。
被災者の声にしっかりと耳を傾け、現場の実態に沿った弾力的な運用をしてもらいたい。
◆液状化対策なお課題
元日の地震は本県にも大きな被害をもたらした。県内の住宅被害は25市町村で確認され、計2万1千棟を超える。
60年前の新潟地震のように液状化現象が起きた新潟市の被害は1万5千棟を超え、県内全体の約7割を占める。地震後に人口減が進んだ地域もある。
住宅だけでなく地盤も精査し、将来にわたり安心して暮らせるようにすることが肝要だ。
被災者に寄り添い、丁寧かつスピード感のある復旧復興に全力を挙げねばならない。