70年前の発足時と比べその姿は大きく変容している。安全保障環境の厳しさが背景にあるが、国是である「専守防衛」の形骸化が進んできたことは事実だ。改めて原点を見つめる必要がある。

 防衛庁と陸海空の3自衛隊が発足し、1日で70年となった。

 戦争放棄と戦力不保持をうたう憲法との関わりで掲げられたのが専守防衛の考え方だ。

 相手から攻撃を受けて初めて、自国を守る目的に限定して武力を行使し、そのための防衛力は必要最小限にするとした。

 しかし、自衛隊を巡る70年の歴史は専守防衛の理念を薄めてきた歴史と言っていい。特に東西冷戦の終結後は明らかだ。

 1991年には、湾岸戦争後のペルシャ湾に海自の掃海艇が派遣された。92年には国連平和維持活動(PKO)協力法に基づき陸自がカンボジアに派遣された。自衛隊の海外任務は定着した。

 2004年には、イラク復興支援特別措置法に基づく初の「戦地」派遣が行われた。

 防衛政策がさらに転換したのは、第2次安倍晋三政権から現在に至るこの10年だ。

 安倍政権は14年、密接な関係にある他国への攻撃を自国への攻撃とみなす集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、15年には安保関連法を成立させた。

 専守防衛と集団的自衛権行使は本来、相いれないものだ。

 岸田文雄政権は22年に安保関連3文書を閣議決定し、反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有と防衛費の大幅増を決めた。

 防衛装備移転三原則の運用指針を改定し、殺傷能力のある武器輸出も可能にした。

 海洋進出を活発化させる中国、弾道ミサイルや核開発を進める北朝鮮の存在が背景にある。

 問題は、防衛政策の重大な転換を解釈変更や閣議決定などで進めるこの間の政権のやり方だ。専守防衛をなし崩しにし、形骸化させてきたのは間違いない。

 中国を念頭に、政府は南西地域の防衛力強化を図っている。

 台湾有事などへの対処力向上を目的に、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を24年度末に発足させる計画だ。

 部隊の運用性向上が見込まれる一方、米軍との一体化がさらに強まることが懸念される。自衛隊が実質的に米軍の指揮下に入ることにならないか、注意が必要だ。

 自衛隊は米軍だけでなく、アジアやオセアニアなどの同志国軍との関係を深めている。こうした動きに中国が警戒を強めていることを認識しておかねばなるまい。

 自衛隊が果たしてきた役割で大きいのは災害派遣だ。内閣府の世論調査では、期待する役割のトップに挙がった。窮地にある国民を支える現場の奮闘は、自衛隊への理解と期待につながっている。