日本全体の課題である東京一極集中の是正に、都知事が果たす役割は大きい。小池百合子都知事には、地方全体のけん引役として旗を振ってもらいたい。

 任期満了に伴う東京都知事選で、現職の小池氏が、前広島県安芸高田市長の石丸伸二氏、前参院議員の蓮舫氏らを破り、3選した。

 少子化対策、防災対策などが争点となった。政策論争は低調だったが、3選を果たしたのは、2期8年の実績が一定の安心感として評価されたということだろう。

 選挙戦で小池氏は高校授業料の実質無償化、0~18歳への月5千円支給など子育て支援の取り組みを強調した。公約に子育て世代の家賃負担軽減や無痛分娩(ぶんべん)への助成制度新設を掲げ、支持を集めた。

 2023年の都の合計特殊出生率が0・99と全国最低となった中、子育て支援で手厚い独自策を講じることは理解できる。

 小池氏に求めたいのは、最大の人口規模を持つ地方自治体のリーダーとしての役割だ。

 少子高齢化が進み、多くの自治体が人口減に苦しんでいる。一方で、都人口は8年前より50万人以上増え、24年4月現在1410万人を超えている。

 本県をはじめ地方から首都圏への人口流出が続けば、格差が一層広がり、地方創生の実現は遠くなる。小池氏には地方同士の連携や支援にも力を尽くしてほしい。

 最大の電力消費地である首都圏の電力の多くは、本県など地方でつくられている。だが選挙戦で、東京電力柏崎刈羽原発の再稼働を巡る問題があまり議論されなかったことは残念だ。

 本県の花角英世知事は、一般論として原発は国策で、国全体で議論すべきだとした上で「電力消費地には県民の原発に対する思いについても理解してほしい」と述べている。小池氏には原発立地県の実情に向き合うことも求めたい。

 選挙結果からは、既存政党への不信が広がっている現状も浮き彫りになった。

 自民、公明両党は小池氏を支援したが、自民裏金事件などで政権支持率が低迷する中、表立った動きはできなかった。立憲民主党などが支えた蓮舫氏は、与野党対決に持ち込めず、3位に沈んだ。

 一方で政党に頼らず交流サイト(SNS)を駆使した石丸氏は、無党派層に食い込み、2位となった。既存政党は有権者の厳しい視線を重く受け止める必要がある。

 民主主義の根幹である選挙の在り方にも重い課題が示された。

 過去最多の56人が出馬した中で、多数の候補者を擁立した政治団体がポスター掲示板を事実上売買する「掲示板ビジネス」のような事態は公選法の想定外だ。

 政治活動の自由や表現の自由は守らねばならない。しかし選挙の劣化を招くような行為には、一定の歯止め策を検討すべきだろう。