昨今、あまり見かけなくなったものの一つが街の玩具店ではないか。子どものころに暮らした小さな田舎町にあった3店はどこも繁盛していたのだが
▼魚沼市堀之内には、そんな昔懐かしい店がいまも健在なことを本紙魚沼面で知った。記事は新型ウイルスに感染して一時休業を余儀なくされた店主に、励ましの手紙が届いたと伝えていた
▼届いた8通は平仮名で「げんきなかおがはやくみたいです」と書かれたものや、達筆な文字で「ゆっくりご養生下さい」と記されたものがあった。食べ物の差し入れも届いた。店主の妻は感謝を込めて「うれしくてうれしくてなみだがでました」と手書きの文字で張り紙をした。互いを思いやる温かな気持ちが伝わってきた
▼感染禍が広がり始めた2年前の今ごろを思い出す。新たな感染例が報告されるたび、感染した人を特定しようとしたり、誹謗(ひぼう)中傷したりする動きがあった。関西では他人を感染させる恐れがあるとして、ネットに感染者を「殺人鬼」と書き込む市会議員さえいた
▼当時に比べて、感染に対する過剰な反応は落ち着いてきたように見える。ワクチンが普及し、恐怖が薄らいだからか。以前とは比べものにならないほど感染者が増えて慣れたからか。誰もが感染する恐れがあると悟ったからか
▼人が人を思いやる大切さに、私たちが改めて気付いたことも理由の一つでは。マスクを外せない春も3回目となった。玩具店への励ましが当たり前だと思える社会に戻りつつあると信じたい。