平均株価が史上最高値を更新した。円安を背景にした企業業績への期待を反映しているが、物価高で個人の生活は苦しい。景気の好循環を実現するには企業の利益を家計に波及させ、個人消費を回復させる必要がある。

 東京株式市場の日経平均株価が先週、初めて4万2000円台に乗せた。3日続けて終値で最高値を更新する活況ぶりだった。急上昇した反動などでその後は大幅に値を下げたが、なお高水準だ。

 米国の利下げが早期に始まるとの観測や米国経済の底堅さ、半導体関連株の高騰など要因はさまざまある。大きいのは日本企業の先行きへの期待感だ。

 円相場は1ドル=160円前後で推移している。記録的な円安で恩恵を受ける自動車メーカーをはじめとした輸出企業などの業績が上向くと見られている。

 とはいえ、円安は個人、家計にはデメリットが大きい。石油や食品など輸入品の価格が上がり、暮らしを直撃するからだ。

 連合のまとめでは、2024年春闘の平均賃上げ率は5・10%で、33年ぶりに5%台を達成した。しかし、物価変動を考慮した実質賃金はマイナスが26カ月続いている。賃上げが物価の上昇に追い付いていない。

 企業のもうけが家計に十分浸透せず、個人消費が沈んでいることが大きな問題だ。個人消費が上向かなければ、本格的な景気回復、経済の好循環は実現できない。

 消費低迷の影響は6月の日銀短観でも示された。大企業の景況感は足踏み状態ながら引き続き高い水準にあるものの、業種別で見ると小売業や宿泊・飲食サービスは前回調査より悪化した。

 製品やサービスの価格を上げ、消費者に負担を強いる形で高収益を上げる企業も少なくない。そうした企業には、賃上げなど個人消費を増やす方策を真剣に考えてもらいたい。

 円安は家計だけでなく、国内で事業展開する多くの中小零細企業にとってもデメリットが大きい。

 東京商工リサーチによると、24年上半期の全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は前年同期比22%増の4931件と、10年ぶりの多さだった。うち9割近くは従業員10人未満の企業だ。

 仕入れコスト増加など物価高が原因の倒産が増えたという。

 県内も17件増の60件で、75件だった12年以降で最多となった。

 心配なのは、大手と中小零細との企業間格差が広がらないかということだ。株を多く所有する富裕層とそうでない人との格差がさらに広がる可能性もある。

 円相場は先週、急に円高が進む場面があった。政府・日銀が為替介入を行った可能性が指摘されている。これ以上、円安が国民生活に悪影響を与えることのないよう、的確な対応を求めたい。