広い県土の地域医療を支える二大ネットワークが経営危機に陥っていては、県民は安心して暮らせない。持続可能な医療体制を築くために、各病院の経営改革を急ぐと同時に、医療圏ごとの再編議論も深めていかねばならない。

 県内で11病院を運営するJA県厚生連が、経営改革を進めなければ2024年度の純損益の赤字額が60億円以上になるとの見通しを明らかにした。25年度には債務超過に陥る恐れがあるという。

 歯止めのかからない人口減少や、新型コロナウイルス禍以降も続く受診控えによる患者の減少、ウイルス禍対応の補助金の減額などが要因だ。

 23年度決算は過去最大となる約36億円の赤字となっていた。

 厚生連は経営改革方針で、役員報酬カット、各医療圏内の医療機関の再編統合などを盛り込んだ。非常勤診療科や、指定管理への移行といった運営主体の在り方を行政と協議することも挙げた。

 しかし問題は厚生連にとどまらない。13ある県立病院の事業会計も24年度は赤字が過去最大の約43億円と見込まれており、25年度末には運転資金がなくなると試算されているからだ。

 県も5月に、県立病院の赤字解消に向けた経営改革方針を公表し、人件費抑制や人員適正化で運転資金の枯渇回避を目指す姿勢を示したばかりだ。

 厚生連は県や立地自治体に財政支援を要請する方針も示したが、県も財政再建の途上にあり、巨額赤字を抱える県立病院への繰り出し金だけでも既に限界に近い。

 厚生連を十分に支えるだけの余裕はないとみられ、道のりは険しいに違いない。

 県立も厚生連も、経営が比較的良好な病院だけでなく、へき地などでの不採算医療も担っている。

 花角英世知事は、県内医療の二大ネットワークについて「相互に関連することも多い」と指摘した上で、厚生連に対して「具体的にどういう形で応援できるかは、これからだ」と述べるにとどめた。

 県と厚生連は、住民目線に立ち、しっかりと協議してほしい。

 当面、個々の病院が経費削減などの自助努力を迫られるのは避けられない。ただ、構造的な人口減が進む地方では、自助努力にも限界があるだろう。

 地域医療には、どこでも安心して暮らせる社会であるために、採算性だけでは計れない役割がある。国には、地方の実情を踏まえ、県などを柔軟に支援していくことも検討してもらいたい。

 一方、厚生連の今回の公表のタイミングには、病院が立地する地元から唐突との批判も出た。

 医療機関の在り方は、県内7医療圏で議論されている。地域医療を守るには、地域一体で臨む姿勢が不可欠であり、厚生連には丁寧に説明する姿勢が求められる。