直下に活断層が存在する可能性を否定できない以上、再稼働に進むことは困難だ。地震大国であるわが国が抱えるリスクを、過小評価するわけにはいかない。

 原子力規制委員会は、日本原子力発電が再稼働を目指す福井県の敦賀原発2号機の審査会合で、原子炉直下に活断層が存在する可能性があり、原発の新規制基準に適合しないと結論付けた。不適合判断は規制委発足後、初めてだ。

 東京電力福島第1原発事故を教訓に策定した新規制基準は、原子炉建屋など安全上最重要の設備、建物を活断層上に設置することを禁じている。断層が動いた際に損傷する恐れが拭えないためだ。

 今回の審査は、敷地内にある活断層「浦底断層」から枝分かれするように延び、原子炉の北約300メートルにある「K断層」の活動性と、原子炉直下の「D-1断層」とK断層との連続性が焦点だった。

 規制委が5月にK断層の活動性を否定できないとしていたのに対し、原電側は今回、活動性と連続性はないと主張したが、規制委は改めて「明確な証拠により否定できていない」として退けた。

 生じうる最悪の事態まで想定し、より安全側に立った妥当な判断だといえよう。31日の規制委定例会合で、再稼働は審査不合格になる公算が大きい。

 原電は追加調査の意向を示し審査継続を求めているが、これまでも規制委側の指摘を覆す新しいデータを示せず、同じ議論が繰り返されてきた。過去にはデータの無断書き換えもあった。

 無視できないのは、2号機原子炉から浦底断層までの距離が250メートルとあまりに近いことだ。政府の地震調査研究推進本部がマグニチュード7・2程度の地震を起こす可能性を指摘している断層だ。

 1990年代には存在が確実視されていたが、原電は一貫して否定し、認めたのは2008年の試掘溝調査の結果判明後だった。

 活断層が至近であり、新規建設ならば許可は出なかったはずだ。安全第一で考えれば、活断層の見落としが確定した時点で国などは、既存の1、2号機の運転許可を取り消す検討をすべきだった。

 極めて異例の「活断層付き原発」として存続させてきた。原電と政府は、敦賀2号機の不適合判断を重く受け止める必要がある。

 東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発6、7号機の直下にも複数の断層が見つかっている。東電は活断層ではないとし、規制委も審査の中で妥当とした。

 しかし一部はテロ対策に関わるとしてデータは非公開で、東電や規制委の判断に誤りがないかを、専門家らはチェックできない。

 能登半島地震では予想を上回る範囲で断層が連動して動いた。いったん活動しないと評価した断層についても、より詳細な調査や納得のいく情報開示が欠かせない。