史上最大の下落と上昇だ。市場は荒れているが、実体経済に顕著な変調が見られるわけではない。過度に慌てることなく、冷静に状況を見極めたい。円高・株安が景気悪化を招かぬよう、政府・日銀には的確な対応が求められる。
東京株式市場は週明け5日の日経平均株価の終値が前週末比4451円安と、過去最大の下げ幅を記録した。
1987年の米国株式市場の大暴落「ブラックマンデー」翌日に記録した3836円を大きく超える下げだった。下落率は12・4%で、ブラックマンデー時の14・9%に次いで史上2番目となった。
一方で6日は急反発した。終値は前日比3217円高と、1990年に記録した2676円を上回る過去最大の上げ幅を記録した。
平均株価は5日までの3営業日で計7643円下げた。6日はこれを4割程度戻した格好で、3万4675円で取引を終えた。
年初からおおむね上昇基調にあった平均株価が暴落した大きな要因は、日米の金融政策にある。
日銀が7月31日の金融政策決定会合で利上げを決め、それに続いて米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の利下げを示唆したことで円高ドル安が急速に進行し、日本の輸出企業の業績が悪化するとの見方が広がった。
7月30日に1ドル=155円台を付けていた円相場は、8月5日は一時141円台まで上昇した。
米経済指標の低迷で米国の景気減速への警戒感が高まったことも大きく影響し、海外投資家を中心に日本株の売りが膨らんだ。
日銀の利上げは物価上昇につながる円安を抑える狙いもあったが、ここまでの円高・株安は想定外だったのではないか。
岸田文雄首相は6日、「状況を冷静に判断していくことが重要だ。緊張感を持って注視するとともに、日銀と密接に連携して経済財政運営を進めたい」と述べた。
株価の下落は、現状でも弱い個人消費をさらに落ち込ませるなどのマイナスがある。政府・日銀は細心の注意を払い、円高・株安が実体経済に与える悪影響を抑える方策を検討してほしい。
新しい少額投資非課税制度(NISA)で株式投資を始めた県民も多いのではないか。
動揺は大きいと思われるが、留意しておきたいのは、株式市場は乱高下しているものの経済の基礎的条件であるファンダメンタルズに大きな変化はうかがえないことだ。足元の企業業績は全体としては堅調とみられている。
物価高に賃上げが追い付かない状況が続いてきたが、6日発表の実質賃金は27カ月ぶりにプラスに転じ、景気の好循環に向けて好材料といえる。
大荒れ相場はなお続く可能性もある。一喜一憂することなく、長期的な視点で対処したい。