核燃料サイクル政策が行き詰まる中での受け入れに、地元には最終処分場化への懸念がある。事業者は地元と結んだ保管期限の約束を守らなくてはならない。
原発の使用済み核燃料を一時的に保管する中間貯蔵が、青森県むつ市で始まる見通しだ。青森県の宮下宗一郎知事が9日に、保管事業を行う「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」と、立地するむつ市の3者間で安全協定を締結する。
原発敷地外では初の中間貯蔵となり、9月までに東京電力柏崎刈羽原発から使用済み核燃料が搬入される予定になっている。
核燃料サイクルは、使用済み核燃料を化学的な方法で再処理し、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料として再利用する。原発でMOX燃料を使う「プルサーマル」が政策の柱となる。
中間貯蔵施設は使用済み核燃料を再処理まで一時保管するものだが、核燃料サイクルの要となる青森県六ケ所村の再処理工場は1993年の着工以来、完成延期を繰り返している。
持ち込む燃料の持ち主で、RFSの親会社でもある東電と、日本原子力発電は2005年に、青森県、むつ市と、「貯蔵期間を50年」とする中間貯蔵施設に関する協定を結んだ。
貯蔵期間終了までに再処理工場が完成しなければ、協定は空手形になる可能性がある。事業者は、地元との約束を確実に果たすことが必要だ。
使用済み核燃料を再処理工場に運び出せずに、柏崎刈羽原発にたまり続ければ、燃料交換ができなくなる。中間貯蔵は、原発が運転停止に追い込まれる事態を防ぐ妥協策ともいえる。
東電は既に、柏崎刈羽原発4号機の燃料集合体69体を、専用の金属製容器1基に入れて搬出すると発表している。
東電が再稼働を目指す6、7号機の使用済み核燃料の貯蔵率はいずれも90%を超える。東電は「中間貯蔵と再稼働はリンクしない」とするが、中間貯蔵施設が操業すれば、貯蔵率低減が見込める。再稼働には有効な策だろう。
だが、最終処分場化に不安を抱く青森県の住民が、搬出をどう受け止めるかにも思いをはせたい。
再処理より先に中間貯蔵が始まれば、本来の順序が逆転することになる。地元には「話が違う」との不信感もあるだろう。
原発、中間貯蔵、再処理などの核燃料サイクル関連施設は、いずれも地方に立地している。事業者と国は、地方の間に新たな摩擦が生じることがないよう、丁寧に対応してもらいたい。
国策である原子力を巡る地域間の負担は本来公平であるべきだ。
立地地域に対する理解を深めるために、電力の受益者である大都市圏の問題であることも自覚するよう国は周知するべきだ。