巨大地震はいつ発生するか分からない。警戒を怠るわけにはいかない。避難経路の把握や、非常用袋など備えは万全か。しっかりと再点検してもらいたい。

 8日夕、宮崎県南部で震度6弱の地震があった。震源地は日向灘で南海トラフ巨大地震の想定震源域内だ。気象庁は、巨大地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとして「臨時情報(巨大地震注意)」を発表した。

 臨時情報は、想定震源域などでのマグニチュード(M)6・8以上の地震発生や、通常と異なる地殻変動を観測した際に、気象庁が検討した上で発表する仕組みだ。

 今回の地震規模がM7・1と推定されたことから、2017年の運用開始以来初の発表となった。

 南海トラフ巨大地震は駿河湾から今回の地震の震源地である日向灘沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)に沿って起きる。100~150年間隔であるという。

 政府の地震調査委員会はM8~9級の地震が30年以内に発生する確率を70~80%と算出している。

 最大規模の地震が発生した場合、関東から九州・沖縄にかけての広範囲で、強い揺れや高い津波が想定される。32万人以上が死亡するとの推計もある。

 今後少なくとも1週間程度は大きな地震に注意しなければならない。ただ、その後も地震発生の可能性がゼロになるわけではない。

 大切なのは、一人一人が改めて命を守る行動の必要性について認識することだ。

 家族の所在場所を把握し、非常用袋やヘルメットを玄関に置き、靴は枕元に置くなどし、地震が起きたらすぐに避難できる準備が求められる。家具の固定や、出火防止の対策も大事だ。

 障害者や難病患者など要配慮者らが適切に避難する方策について、周囲や行政できちんと考えていく姿勢が欠かせない。

 今回の地震の被災地では、聞き慣れない臨時情報に接し、混乱する住民もいた。

 これまで新型コロナウイルスの感染拡大期に重なり、啓発が進んでいなかったためだ。内閣府の昨年の全国調査でも「知っている」の回答は3割未満だった。

 住民に備えの再確認を促すほか、混乱を防ぐためにも行政は周知を急ぐべきだ。

 過去の災害時に、悪意や悪ふざけによる偽情報の拡散があったが、再びあってはならない。

 総務省消防庁は、南海トラフ巨大地震の防災対策推進地域に指定されている29都府県707市町村に対して、避難態勢の準備などを住民に呼びかけるよう求める通知を出した。

 本県は含まれていないが、油断は禁物である。

 政府の地震調査委は先日、兵庫県北方沖から上越地方沖にかけての日本海に、長さ20キロ以上でM7以上の地震が想定される海域活断層が計25カ所あるとする「長期評価」を初めて公表した。

 長さ94キロ程度の断層帯が最長で、実際に元日に活動して能登半島地震の原因となった。「上越沖断層帯」は長さ86キロ程度で、同程度の地震が発生し得るという。

 南海トラフ巨大地震発生時には、本県が太平洋側からの避難者の受け入れ拠点になることも想定される。その対応策についても考えていく必要がある。

 9日夜に神奈川県で震度5弱の地震があった。お盆などに旅行や帰省で地元を離れる人も多いだろう。巨大地震の対象地域に限らず、どこにいても防災マップなどで避難先を確認してほしい。