特産品が知られ、産業育成につながる一方で、寄付獲得のための返礼品競争の過熱ぶりが目に余る。地域を応援するという制度の理念が見失われてはならない。
総務省は、ふるさと納税制度による2023年度の寄付総額が1兆1175億円になり、初めて1兆円の大台に乗ったと発表した。
本県への納税は、県と市町村を合わせて340億円を超え、前年度より約28億円増えた。県内自治体では、コメ産地の南魚沼市が最多の57億円超を集めた。
利用者は全国で1千万人に達し、住民税納付義務者の6人に1人が利用している計算となった。
返礼品の品目充実や、仲介サイトによる特典ポイントの付与、物価高騰に伴う節約志向の高まりが利用を後押ししたという。
ふるさと納税制度には、寄付することで愛着ある地域を応援し、自治体も選ばれるために努力する意識が高くなるとの狙いがある。
ただ、人気の返礼品を抱える自治体に寄付が偏るなど、次第に理念が薄れ、いびつな形で膨張していることは否定できない。
大手仲介業者の調査では、23年度に寄付した人の67・6%が「欲しい品を検索して寄付した」と回答し、「思い入れがある自治体を選んだ」という人は3割にも満たなかった。
制度には、地方に寄付が回ることで都市との税収格差を是正する目的もある。
しかし、23年度は寄付総額の6割弱が上位1割の自治体に集中し、恩恵が地方に広く行き渡っているとは言えない。
一方、ふるさと納税をすると、居住地へ納める住民税が減るため、住民税減収額が寄付額を上回る傾向にある大都市では、制度に対する不満が強い。
際限のない寄付の膨張や、自治体による偏りを防ぐために、自治体の規模に応じて受け取れる寄付額に上限を設けるといった手だてを考えることも必要だろう。
総務省はこれまで「返礼品は寄付額の30%以下の地場産品」といった規制を設けるなど徐々に見直しを進めてきたが、来年10月からは新たに、自治体が寄付を募る際に特典ポイントを付与する仲介サイトの利用を禁じる。
ポイントの原資に自治体の支払う手数料が含まれる可能性があると総務省が指摘しているのに対し、「自社負担」だと説明している仲介業者も一部にある。
だが自治体側はポイントの有無にかかわらず、手数料が高くても集客力のあるサイトに頼らざるを得ないこともあり、規制の効果は見通せない。
返礼品を受け取らず、災害被災地の復興支援に役立ててほしいというような寄付も広がっている。
地域を応援するという趣旨にかなうものとなるよう、寄付する側も心がけたい。