季節の移り変わりとともに郊外で見かける鳥の顔ぶれも変わった。冬の渡り鳥は姿を消し、トビをはじめ何種類かの猛禽(もうきん)類が目に留まる。空中を旋回したりホバリングしたりして獲物やえさを探す。まさにウの目タカの目である
▼私たち人間もそんな目を手にしたようだ。遠隔操作する小型無人機ドローンに高性能のカメラを搭載すれば、上空からの鮮明な映像をリアルタイムで見られる
▼多くの日本人にとっては、戦争でドローンの力を目の当たりにするのはウクライナが初めてではないか。連日のようにドローンで撮影されたらしい映像が世界に配信される。ロシア軍の包囲攻撃が続くマリウポリでは、見渡す限りの建物が廃墟と化していた
▼衛星画像よりも地表に近い位置から撮影される。そのため、より生々しさが伝わってくる。少し前まで、そこで人が暮らしていた。あるいは、今もその場所で息を潜めている人がいる。そんな様子が感じられ慄然(りつぜん)とする。ロシアは今後、マリウポリをはじめ東部に戦力を集中させるという
▼上空からは広い範囲を見通せるので状況が把握しやすい。米軍は早くから活用していたようだ。武器を搭載して攻撃できるほか、敵の動きを把握し味方を守る役割もある。ウクライナ軍の善戦の背景にはドローンの存在もあるらしい
▼技術は日進月歩なのに人間の内面は変わらないのか。いまだに戦争という愚行が繰り返される。ロシア軍が撤退した首都周辺では路上に市民の遺体が多数残されていたという。