臨時情報による呼びかけは終了したが、巨大地震の恐れがなくなったわけではない。各方面で見つかった課題を精査し、いざという時への対策を改めて講じたい。
政府は15日、発表していた南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)について、大地震などの異常な現象が観測されなかったとして、防災上の呼びかけを終了した。
8日に宮崎県で震度6弱を観測したマグニチュード(M)7・1の地震以降、想定震源域で大地震につながる可能性がある特段の変化を示す地震活動や地殻変動は観測されなかった。
一方で、世界的な地震の統計では、大地震が連続して起きる可能性は、最初の地震から時間が過ぎると低下傾向にあるものの、1週間以上後に発生した事例もある。
南海トラフ地震は切迫性の高い状態だ。突発的な大地震が発生し得ることを忘れず、日頃から意識を高めておく必要がある。
初の発表となった今回は、臨時情報の内容や位置付けなどが国民に十分理解されていない実態が浮かび上がった。
今回のような「巨大地震注意」では、日頃の備えや避難経路などの再確認が促される。一方、より危険度が高い場合に出される「巨大地震警戒」は、津波からすぐに避難できない沿岸住民に1週間程度の事前避難が求められる。
今回、地震予知の情報と勘違いして1週間以内に大地震が来ると思い込んだ人もいるなど、受け止め方はさまざまで、海水浴場の開設なども地域で対応が割れた。
臨時情報の仕組みをつくった政府からの発信が足りないとの批判もあり、政府の担当者は「反省するべきところがあった」と述べた。政府は反省点を洗い出し、周知の徹底といった混乱を招かぬ対策を急ぐべきだ。
また、障害者など要配慮者らへの情報提供や、介助がないと避難できない人が入居する高齢者施設などの対応についても早急に検討していく必要があろう。
政府は今後、自治体や事業者の取り組みを含めて検証し、結果を受けて対応指針を見直す方針だ。しっかりと取り組んでほしい。
国内では南海トラフ地震のほかに、首都直下地震や日本海溝・千島海溝地震も懸念され、内陸域や日本海には活断層がある。
本県など南海トラフ地震の想定震源域外の人も関心を持ち続けたい。今回の臨時情報を契機に、住宅耐震化といった命を守る取り組みを着実に進める必要がある。
巨大地震が起きれば、企業活動の停滞による景気低迷も懸念される。企業には、損害を最小限に食い止め、早期復旧を図れるように事業継続計画(BCP)の策定を急いでもらいたい。
ただ、ノウハウや体力に乏しい中小企業の策定率は低い。政府は策定への支援を手厚くすべきだ。