疑惑を持たれた議員は事の経緯を自らしっかり説明しなければならない。「政治とカネ」の問題がうやむやに片付けられては困る。

 広瀬めぐみ参院議員(岩手選挙区)が参院議長宛てに議員辞職願を提出し、許可された。

 広瀬氏は7月、勤務実態があるように装って公設第2秘書の給与を国からだまし取ったとして、詐欺容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けていた。

 東京・永田町の議員会館事務所や、都内にある自宅などの捜索を受けた当日に自民党を離党した。

 第2秘書は2022年12月から23年8月まで在籍しており、この間の給与総額は300万円台後半に上る。広瀬氏が大半を受領したとみられている。

 広瀬氏は、第2秘書に勤務実態はなかったと説明しているという。辞職に際して発表したコメントでは「事務所の経費捻出のため、第1秘書の配偶者に第2秘書をお願いし、給与から資金提供を受けたことは事実だ」と認めた。

 公設秘書の給与は国民の税金で賄われる。秘書給与詐取は過去に国会議員が何人も立件されている。広瀬氏は弁護士でもある。違法と分かっていたはずで悪質だ。

 自民党では堀井学衆院議員(比例北海道)も7月、選挙区内の複数の有権者に秘書を通じて香典を提供したとして、公選法違反容疑で東京地検特捜部の家宅捜索を受けている。やはり捜索当日に自民党を離党した。

 堀井氏は自民党の派閥裏金事件で、所属していた安倍派から2196万円の還流金を受領しながら政治資金収支報告書に記載せず、政治資金規正法違反容疑の告発状も出されている。香典の原資が捜査の焦点の一つとなっている。

 秘書による政治家名義の香典提供が禁じられていることは政治家なら知っていて当然だ。事務所内で違法性を指摘する声があったものの、堀井氏が「慣例としてやってきた」と提供を続けるよう指示していたとも報じられている。

 広瀬氏と堀井氏はいずれも、本人や事務所がコメントを出しただけで、記者会見での説明はいまだにしていない。

 捜査中だとして説明を避ける議員が少なくないが、理由になっていない。逃げているようでは、国民の代表である政治家としての責任を果たしたとは言えまい。

 法に触れる行為をする議員に議員を務める資格はない。カネがかかる政治や選挙の在り方は、根本から改めるべきだ。

 不祥事を起こした議員が離党したからといって、自民党が責任を免れるわけではない。

 岸田文雄首相は裏金事件の責任を取るとして退陣表明したばかりだ。「政治とカネ」の問題を払拭しない限り、自民党の未来はない。そのことを関係者全員が胸に刻んでもらいたい。