これ以上、犠牲者を増やしてはならない。双方は停戦合意に向けて歩み寄り、中東地域への戦火拡大を止めてもらいたい。
パレスチナ自治区ガザの保健当局は、昨年10月に始まったイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘で、ガザ側の死者が4万人を超えたと発表した。
2023年に約223万人だったガザの人口の約1・8%が死亡したことになる。
がれきに埋まったままの遺体や行方不明者は1万人以上で、実際の死者はさらに多い。
イスラエル軍は、ハマスの指令拠点になっているなどとして住宅や病院などへの攻撃を繰り返しており、今月も10日に学校が空爆されて100人以上が死亡した。
民間人がいる施設への爆撃は断じてあってはならず、イスラエルの行為は度を超している。
ハマス壊滅を公言するイスラエルに対し、ガザ住民からは「イスラエルはガザ全住民を殺そうとしている」との声が漏れている。憎悪の連鎖に強い懸念を覚える。
看過できないのは、罪のない子どもたちの犠牲が一段と深刻化していることだ。
戦闘による子どもの死者は約1万6千人に上り、深刻な食料不足による栄養失調で治療が必要な子どもは5万人を超えた。
ガザで25年間確認されていなかったポリオ(小児まひ)の感染も見つかり、国連は何十万ものガザの子どもが危機にさらされていると警告している。
停戦が実現しなければ、子どもたちを危機的状況から救出できないことは明らかだ。何としても停戦を急がなくてはならない。
米国など3カ国の仲介で再開した停戦交渉の行方に注目したい。
仲介3カ国は16日、イスラエルとハマスの「隔たりを埋める」新提案を示したと声明を出した。19日に実務協議が再開し、週内にも高官協議が始まるもようだ。
新提案の詳細は不明だが、今度こそ停戦が実現することを、国際社会は切望している。
ただハマスは、新提案がイスラエルのネタニヤフ首相の条件に沿うものだとして反発しており、交渉の先行きは見通せない。
停戦交渉には、ガザ戦闘がイランとイスラエルとの地域紛争に拡大することを防ぐ狙いもある。
イランの首都テヘランで先月起きたハマスの最高指導者暗殺を巡り、イランはイスラエルの犯行と断じて報復を宣言している。
予期せぬ衝突が起こる前に停戦交渉を前進させ、中東全体の緊張を解かねばならない。
ガザではイスラエルの人質約120人がなお拘束され、半数以上は既に死亡したとの推計もある。
ハマス、イスラエル双方は、停戦が1日延びれば、犠牲が増え続けることを強く自覚し、早急に停戦交渉に合意するべきだ。