地に落ちた信頼を回復し、党再生の一歩にできるか、注目される総裁選だ。候補者は「政治とカネ」の問題と決別する具体策を明確に示さねばならない。

 自民党は、岸田文雄首相の後継を選ぶ総裁選の日程を「9月12日告示-27日投開票」と決めた。

 選挙期間は15日間に及び、現行の総裁公選規程となった1995年以降で最長となる。

 既に小林鷹之前経済安全保障担当相が出馬を表明し、石破茂元幹事長、河野太郎デジタル相、林芳正官房長官が正式表明に向けて最終調整に入った。

 周囲に意向を伝えた小泉進次郎元環境相や、意欲を示す上川陽子外相ら計11人の立候補が取り沙汰され、総裁選は混戦模様だ。

 派閥裏金事件による政治不信が色濃く残る中での総裁選で、自民にとって正念場となる。各候補者は、政治資金を巡る不信の払拭に向けて、実効性のある改革案を示さねばならない。

 事実上、首相を決める選挙でもある。政治改革のほかにも、物価高対応、安全保障政策などへの見識や、国を導くリーダーの素養が備わっているかも問われる。

 「金のかからない選挙」を実現し、金権体質から脱却を図れるかどうかも総裁選の焦点となろう。

 党総裁選挙管理委員会で、党員に支持を呼びかける自動音声の電話作戦や、告示前の大量の郵送物送付は巨費がかかるとして、禁止や自粛が浮上しているが、政治活動の自由との兼ね合いから、要請止まりになりそうだという。

 岸田首相は、裏金事件の責任を取るとして退陣表明したものの、共同通信社の世論調査では、「首相退陣が自民の信頼回復のきっかけになるか」との問いに対し、自民支持層でも68・7%が「ならない」と答えている。

 国民の厳しい声を受け止め、自民は党を挙げて金のかからない総裁選にしていく必要がある。

 裏金づくりの温床となった派閥の今後も気になる点だ。

 従来の総裁選は派閥の領袖(りょうしゅう)が主導し、立候補に必要な20人の推薦人集めも派閥が中心だったが、今回は、裏金事件を受けて麻生派以外が解散方針を決めており、派閥の縛りがなくなった。

 推薦人の顔ぶれには、候補者の人脈や人間関係が従来よりも反映されることになる。

 一方で、党内では派閥再結集の動きも見られるといい、総裁選は派閥の行方にも影響しそうだ。

 総裁選の日程は「9月7日告示-23日投開票」の立憲民主党代表選を意識して決まった。総裁選に関心を集め、立民代表戦を埋没させる狙いがあるとみられる。

 党のトップを決める選挙が同時進行することは、どちらが政権を担うにふさわしいかを、国民が見定める機会にもなる。両党には活発な論戦が期待される。