必ずやり遂げなければならない作業だが、初日からつまずくとはどういうことか。不安が募る。東京電力はミスの原因を究明し、廃炉に向けた作業を安全かつ着実に進めなければならない。

 東電は22日、福島第1原発2号機で溶融核燃料(デブリ)の取り出しに向けた準備作業を開始した。しかしすぐに中断した。

 回収装置を押し込むパイプの取り付け順を間違えたという。作業の再開時期は決まっていない。

 2011年3月の福島第1原発事故では1~3号機で炉心溶融(メルトダウン)が起きた。冷却できなくなった核燃料が溶け落ち、冷えて固まったものがデブリだ。極めて強い放射線を出す。

 廃炉工程表では事故後10年以内に最初の試験的な取り出しを始める計画だったが、機材の開発などに時間がかかったため開始が数年ずれ込み、今回が初めてだ。

 国民が注目する中で作業ミスはどうして起きたのか。東電はこれまでも初歩的で人為的、お粗末といえる失敗を何度もしている。今回のミスの原因を徹底的に調べ、今後に生かさなければならない。

 出はなをくじくような事態に改めて実感させられるのは、廃炉作業の困難さだ。

 今回採取を予定するデブリは3グラム以下だが、1~3号機には全部で推計880トンある。取り出しは廃炉への最難関とされる。

 デブリには原子炉内にあった制御棒などの構造物やコンクリートも混じっているとみられる。性質や状態、どこにどれだけあるかなど全容は分かっていない。処分方法や処分先も未定だ。

 工程表は事故後30~40年での廃炉完了を目標に掲げる。困難が予想されるが、政府、東電は国内外の英知を結集し、必ず廃炉を実現させなければならない。

 福島第1原発の廃炉を巡っては、昨年8月24日に始まった処理水の海洋放出が進んでいる。

 これまでに計7回、約5万5千トンの放出を終えたものの、汚染水の発生は今も止められていない。

 敷地内のタンクで保管する処理水はなお約131万トンに上り、開始時点の2・4%に当たる約3万3千トンが減っただけだ。

 東電の小早川智明社長は22日、柏崎市役所で桜井雅浩市長と面会し、柏崎刈羽原発について「6、7号機の再稼働後2年以内に、1~5号機に関して、廃炉を含む最適な電源構成の道筋を付けたい」と述べた。

 当初の「5年以内」を「2年以内」に短縮した形で、桜井氏は「再稼働の要請があった場合、応えられる段階に至った」と、再稼働を容認する考えを示した。

 しかし廃炉の確約はなく、対象の号機も明らかでない。東電は再稼働を目指すのであれば、具体的な廃炉計画をしっかりと明示しなければならない。