俳優の東ちづるさんは昨年2月、60歳の時に初期の胃がんを内視鏡手術で除去した。その後、病気を公表するかどうかでずいぶん悩んだ

▼プライベートなことだし、面白い話ではない。だが、2人に1人ががんになる時代だ。隠すことはないのではないか。がん患者や家族のために何かしらの力になれるかもしれない。そう考えて、翌月に記者会見を開いた

▼すると、思わぬ反応があった。友だちだけではなく、話したこともない人から「私も実はがんなの」「今、家族ががんでね」と声を掛けられるようになった。周りにこんなに患者がいたのかとびっくりした

▼東さんは以前似た経験をしていた。初めてゴルフ番組に出演したら、たくさんの人から「今度一緒に行こう」と誘われるようになったのだ。日本対がん協会などが先ごろ開いたオンラインイベントで明るく語っていた。病気とスポーツの間に意外な類似点があったというわけだ

▼本紙おとなプラスに「ゴルフは心」を連載中のプロゴルファー鈴木規夫さん(70)はゴルフを人生に例えていう。「ゴルフ場は山あり、谷あり、砂あり、水あり。さまざまな障害物が配置されています。波乱に富んだコースは人生行路そのものでしょう」

▼とするならば、がんは人生の障害物の一つだろうか。避けられるものは避けるに越したことはない。だが、避けられなかったものとは正面から向き合うしかない。つらくなったら小さなボールをがんだと思い、ドライバーをフルスイングしてみるか。

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