制度の導入が、誰もが暮らしやすい社会の実現につながってほしい。多様性を認識し、理解を深めることが大切だ。
県は性的少数者のカップルについて、関係を公的に認める「パートナーシップ制度」を導入した。
婚姻と異なり、法律上の効果はないが、届け出ると、証明書に当たる受領証と携帯用カードが発行される。公営住宅への入居や、手術の同意などの際に関係を示す公的書類となる。
パートナーシップ制度は都道府県単位で既に多くが導入し、本県は29番目となる。県内では先行していた新潟や三条、上越など6市に続いて胎内市も2日にスタートし、7市となった。
今回、広域自治体の県が導入したことで、県全域がカバーされ、県内の当事者は居住地にかかわらず制度を利用できる。
市町村を越えた転居で生じるサービスの差や、手続きの負担が緩和されることを期待したい。
民間では、携帯電話の家族割引や生命保険金の受け取りといったサービスも受けやすくなる。
制度開始に合わせ、第四北越銀行は同性カップルや事実婚の場合も、パートナーを住宅ローン審査時の収入合算などの対象者に含めると発表した。
こうした企業の取り組みが続くことが、生活の利便性向上になるだろう。県は企業への周知にも力を入れてほしい。
導入の是非を決める判断材料とするために、県が昨年6~7月に行った県民意識調査では、制度導入を「必要」と答えた人は「やや必要」と合わせて66・2%に上った。市町村の反対もなかった。
県は当初から制度を議決が必要な条例ではなく、行政の判断で定められる要綱とする方針だった。
ただ、県議会では最大会派の自民党県議団の一部から「性急にやってはいけない」といった慎重論があった。
自民に不満がくすぶるのは、昨年国会で成立し、施行されたLGBTなど性的少数者への理解増進法を巡り、一部支持層の反発を招いたことが背景にある。
しかし、先進7カ国(G7)の中で、同性婚や同性カップルの法的擁護を容認していないのは日本だけだ。多様性を受け入れる寛容な社会の実現は、国際社会から求められているものでもある。
県は、パートナー関係にある人の親族を、生計を共にする家族として証明する「ファミリーシップ制度」も同時に導入した。
これらの制度をきっかけに、差別や偏見をなくし、多様な家族のかたちや価値観を認め合うことができる社会を目指したい。
制度を作って終わりではなく、地域で暮らす全ての人が暮らしやすさを実感できるように、県や市町村は制度の普及や啓発に努めなくてはならない。