地方の人口減少は危機的な状況にある。日本全体としても社会的、経済的な損失は大きい。国はこれまでの取り組みを十分に検証し、地方との連携を強めてより強力に対策を進めるべきだ。
人口減少の克服と東京一極集中の是正を目指す地方創生について、自治体の68%がこの10年間の取り組みの成果が不十分と受け止めていることが、共同通信社のアンケート調査で分かった。
本県自治体はさらに多い78%が不十分と回答した。
2014年に始まった地方創生で、各自治体は移住受け入れや子育て環境整備などを進めた。
しかし日本の人口は減り続けている。本県の人口は10年で約20万人減り、約210万人になった。
調査結果は人口減が止まらない実態を反映したものと言え、深刻に受け止めなければならない。
アンケート調査では、効果が不十分だった理由として「自治体単独での対策には限界があった」との回答が最多の73%に上った。
日本全体の人口が減る中で移住者の獲得競争などが起きており、自治体単独での取り組みに限度があるのは明らかだ。
理由は他に「予算・人手が足りなかった」が13%、「対策のノウハウがなかった」が7%だった。
自治体が東京などのコンサルタント会社に頼り、各地で似たような取り組みがあるとの指摘がある。「怪しいコンサルが入り込み、自治体の財源を搾取する構図がある」と答えた自治体もある。
こうした結果を踏まえれば、国が自治体の施策を交付金で支援する現在の在り方を見直し、国がより主体的に施策を進めることを検討するべきだ。
もちろん、自治体の努力は欠かせない。ふるさと納税で財源を確保し、子育て支援などを手厚くして効果を上げる自治体もある。
大事なのは国と自治体が一体となり、産業界なども巻き込み総力戦で対策を進めることだ。
望む仕事がないなどの理由で地方から若い女性の流出が続いている。自治体アンケートでは、雇用や賃金、根強い性別役割分担の意識などの男女格差が影響しているとの回答が60%に上った。
一方、厚生労働省が公表した男女賃金格差の指数は、男性の賃金に対して女性の水準は7~8割にとどまった。女性の管理職割合が低い地域や勤続年数が短い地域は格差が大きい傾向にあるという。
働きにくさは人口減に直結する問題と捉える必要がある。抜本的な解消に努めなければならない。
政府は結婚を機に地方に移住する「移住婚」の女性に支援金を支給することを検討したが、対象を結婚予定のある女性に限ったことに批判が殺到し、撤回した。
求められるのは一過性ではなく、地に足の着いた取り組みであることを忘れないでもらいたい。