問われているのは、自民党に代わりうる政権担当能力を示せるかだ。党勢回復につながる活発な論戦を期待したい。
立憲民主党の代表選が7日告示され、野田佳彦元首相、枝野幸男前代表、泉健太代表、吉田晴美衆院議員の4人が立候補した。23日に新代表を選出する。
旧民主党政権で首相を務めた中道・保守系の野田氏、立民初代代表でリベラル系の枝野氏のベテラン勢と、告示前日に出馬表明した現代表の泉氏、告示当日に滑り込んだ吉田氏が競う構図だ。
若手や女性ら10人前後の出馬が想定される自民総裁選がほぼ同時期に行われる。立民代表選が埋没しかねないと懸念する声もある中で、唯一の女性で当選1回の吉田氏の挑戦によって、どうにか刷新感をつくった格好だ。
7日に行われた日本記者クラブの討論会では、4氏とも政治改革を巡る自民の姿勢を批判した。政権交代の必要性や政策活動費の廃止などを訴えた。
先の国会で与党だけで成立させた改正政治資金規正法は「抜け穴」が多く、不十分な中身だった。
政治改革へのスタンスは国民も注目している。政治への信頼をどう取り戻すか。代表選を通じて大いに議論を深めるべきだ。
安全保障や憲法といった主要政策への姿勢も争点となる。原発政策では立場に隔たりが出ている。
次期衆院選をにらみ共産党を含む野党連携の在り方も問われる。
討論会で野田氏は「どの野党とも対話できる環境をつくる」、枝野氏は「包括的な連携は難しい」、泉氏は国民民主党との連立を「想定している」、吉田氏は「事前にどの政党と組むか国民に示すべきだ」とそれぞれ述べた。
小選挙区制の下で政権交代を実現するには、野党間の候補者調整が重要になる。野党第1党がいかに他党と協力関係を築くのか。4氏には丁寧な説明が求められる。
立民は、自民党派閥の裏金事件などで自民が批判にさらされている中でも、世論の受け皿になれずにきた。共同通信の8月の世論調査で支持率は12・3%で、自民の36・7%と大きな差があった。
今回、泉氏が代表にもかかわらず推薦人確保に苦労したのは、早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、新たな「党の顔」を望む党所属国会議員が多かったことを反映している。
次期衆院選を見据え、誰を「党の顔」に据えるかは大事だが、具体的にどんなことに取り組む政党なのか、ビジョンを国民に明示することは一層大切だ。
経済対策や少子高齢化、社会保障、地方の疲弊といった生活に密着した課題にはどう向き合うのか。自民との違いをきちんと示し、国民が政権を任せることができると感じられる、深みのある論争を展開してもらいたい。