並々ならぬ努力を積み重ねてつかんだ晴れの舞台で、どの選手も輝いていた。ハンディをものともせず、感動と勇気を与えてくれた選手たちの奮闘をたたえたい。
パラリンピック・パリ大会が8日閉幕した。史上最多の168カ国・地域と難民選手団らが参加し、12日間にわたり熱戦を繰り広げた。
原則無観客開催の前回東京大会にはなかった観客との一体感も生まれた。150以上の国・地域でテレビ放送された。共生社会に向けた機運を醸成したに違いない。
日本勢は海外大会最多の175選手が参加し、計41個のメダルを獲得した。うち金は14個と前回東京大会を上回った。
悲願の金メダルを初めて取った種目も多かった。
車いす同士の激突で「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれるハードな競技、車いすラグビーでは日本チーム唯一の女子である倉橋香衣選手の活躍が目を引いた。
車いすラグビーの障害が最も重いクラスに属し、障害と性別の二つの壁を乗り越えてきた。国内に女性の登録選手は7人しかいないという。彼女の活躍が競技人口の裾野を広げると期待したい。
ベテラン勢の奮闘が目立った。陸上男子400メートル銅の伊藤智也選手は、61歳で日本選手最年長メダリストとなった。53歳の杉浦佳子選手は自転車女子個人ロードレースで2連覇し、自身の日本選手最年長金メダル記録を更新した。
今後が楽しみな若手の台頭もあった。車いすテニス男子シングルスで18歳の小田凱人選手が優勝した。卓球女子シングルスは21歳の和田なつき選手が金メダルに輝いた。卓球で日本勢のシングルス制覇は男女を通じて初の快挙だ。
本県から唯一出場した上越市出身で競泳女子の石浦智美選手は2種目で入賞した。
一方、「平和の祭典」に厳しい国際情勢も影を落とした。
個人の中立選手として出場したロシア勢から、ウクライナ選手が差別的な発言などで挑発されたとして、ウクライナ・パラリンピック委員会が抗議した。事実なら残念なことだ。
ウクライナは金22個と見事だった。戦地で負傷した選手も参加した。難民選手団は2016年の結成以来、初のメダルを獲得した。
紛争や飢餓などに苦しむそれぞれの祖国の人たちに力を与えたことだろう。