家族で協力して子どもを養育する基盤をつくる重要な機会になるはずだ。男性が育児休業を取得しやすい環境を整え、子どもと向き合うパパを後押ししたい。
厚生労働省の雇用均等基本調査で、2023年度の男性の育児休業取得率が30・1%となったことが分かった。17・1%だった22年度から急増し、調査開始以来、初めて3割を超えた。
取得する期間も長期化した。18年度に70%超だった「2週間未満」が40%以下に減少した一方で、11・9%だった「1~3カ月未満」が28・0%に増加した。
妊娠出産を申し出た労働者に対する育休制度の周知や意向確認が、22年4月に事業主に対して義務付けられた影響があるという。
取得した男性からは「家族で過ごせる貴重な時間だった」「子どもの日々の成長を実感できた」といった声が聞かれている。
子どもとの濃密な時間を過ごし、親として経験を積む機会になっていることがうかがえる。家事や育児と仕事の両立について深く考える時間にもなるだろう。
ただ女性の取得率84・1%に比べると落差は依然として大きく、まだ十分ではない。
政府は男性の取得率を「25年までに50%、30年までに85%」にする目標を設定しているが、女性と同程度まで高めていくのは容易ではないはずだ。
収入減や、取得しづらい職場の雰囲気、本人以外には難しい業務を担当しているなど、男性が取得をためらう背景にある課題を解消していかなくてはならない。
育休給付は現在、手取り収入の実質8割が支給されているが、政府は来年4月から、両親共に14日以上の育休を取れば、最大28日間、実質10割に引き上げる。
制度を拡充し、若い世代の金銭的な不安を払拭したい。
育休中の社員の業務をカバーする同僚らに手当などを支給する企業は幅広い業種で増えている。業務が増える同僚の不公平感を緩和し、育休取得への気兼ねを減らす効果があるという。
人事評価に響くのではないかという不安も、取得をためらわせている。育休を取得した人を積極的に昇進させれば、キャリアに影響させないという企業側の姿勢を示すことにもなるだろう。
若者の意識調査では、男性の育休取得実績がない企業に「就職したくない」という回答は、男女合わせて6割を超える。男性の育休取得は、人材獲得の観点からも、重要な要素と捉えてほしい。
中小企業は人繰りが厳しく、大企業に比べて取得が進んでいない実態もある。地方に多い中小企業でも取得を伸ばすには、政府による支援策が不可欠だ。
女性と男性が共に仕事と家庭を両立できるように、企業は長時間労働の是正にも本腰を入れたい。