交通空白地の解消を目指すものだ。過疎や高齢化に悩む地域住民の移動手段として、安全第一で成功させたい。新制度を活用しながら、他地域の参考になる取り組みを期待したい。

 タクシー会社が主体となり、一般ドライバーが自家用車で住民や観光客らを有料で運ぶ「日本版ライドシェア」のサービスが、県内でも導入される。

 第1号となるのは、新潟市南区に営業拠点を置く二つのタクシー会社だ。両社は一般ドライバーの運行管理を担う。

 毎日午後5時台から9時台に、両社が2台ずつ導入する。10月上旬の開始を目指している。

 運賃は乗車後のメーター制ではなく、事前に乗車地と降車地を設定し、確定する仕組みだ。

 南区では、客の配車依頼に対するタクシー運転手の承諾割合である「マッチング率」が、夕方以降は8割以下で、タクシー不足が目立つ。バスも減便傾向で、交通手段の確保が急務となっている。

 家族がいないと移動できないという高齢者らの声もある。待望している人は少なくないだろう。

 日本版ライドシェアとは別に、自治体などが主体となる「自治体ライドシェア」は既に県内で10以上の市町村で導入されている。

 「佐渡島(さど)の金山」の世界文化遺産登録による来訪者増が見込まれる佐渡市では今夏、実証調査事業が行われた。お盆以外は低調だったという。検証が必要だ。

 国は安全を前提に、日本版ライドシェアを全国へ拡大する方針で、国土交通省は今月、地方を対象とする規制緩和策を発表した。

 客は原則、配車アプリを使って予約や支払いをする。ただ、地方ではアプリの普及が不十分だったり、不慣れな人がいたりすることもあり、電話での配車や、現金での支払いも可能とすることをガイドラインに明記した。

 高齢化が進む地方で、デジタル弱者がそのまま交通弱者にならぬよう十分に配慮してほしい。

 ライドシェアは、第二種運転免許を持つタクシー運転手とは異なり、一般人がドライバーを務める。接客などの課題があり、マナー講習などが大事になる。なり手の確保策も練る必要があろう。

 飲酒運転の防止など安全面のチェック体制整備も欠かせない。

 政府はライドシェアの主体としてタクシー会社以外に、IT関連会社などの参入を認めるといった全面解禁を視野に入れている。

 ただ、人口減の中で苦戦する地方の既存会社の収益が脅かされ、将来的には一層不便になる事態を招きかねないとの懸念もある。

 ドライバーの待遇面をはじめ気になる点は多々ある。全面解禁の議論は拙速を避けるべきだ。

 地元の住民や業界の声を聞いた上で、地域交通の利便性向上につなげてもらいたい。