アニメや漫画、ゲームなどにとどまらない日本のソフトパワーが示された。時代劇の魅力を世界に広めた快挙をたたえたい。

 米テレビ界最高の栄誉とされるエミー賞で、日本の戦国時代が舞台の米配信ドラマ「SHOGUN 将軍」が連続ドラマ部門作品賞をはじめ18冠に輝いた。

 出演した真田広之さんとアンナ・サワイさんがそれぞれ主演男優賞、主演女優賞を獲得したほか、監督賞も受賞した。

 衣装や視覚効果、音響などの部門でも受賞しており、テレビ番組の単一シーズンの受賞数としては歴代最多を記録した。

 ネット配信によって時代劇の面白さを世界に伝え、私たちにもその魅力を再認識させた。偉業の達成に大きな拍手を送りたい。

 SHOGUNは関ケ原の戦い前夜が舞台の歴史スペクタクルドラマだ。徳川家康がモデルの武将が生き残りをかけて策略を巡らせるなど、乱世の複雑な人間ドラマが繰り広げられる。

 大きな特徴は、ハリウッドの作品にありがちな不自然な日本の描写を排除し、「本物の日本」が追求されていることだ。

 日米双方の出演者やスタッフが製作に携わり、脚本から美術、衣装、所作に至るまで時代考証を徹底した。作品は日本語のせりふと英語の字幕が多用されている。

 重要な役割を果たしたのがプロデューサーも務めた真田さんだ。

 真田さんは2003年の映画「ラストサムライ」にトム・クルーズさんや渡辺謙さん(魚沼市出身)らとともに出演してハリウッド進出を果たし、その後は拠点を米国に移した。

 多くのハリウッド作品に出演する中で、日本に関する誤ったイメージや描写の是正に取り組んできた。SHOGUNでは京都からスタッフを呼び、本場の時代劇作りのノウハウを導入した。

 約20年にわたって米国で重ねてきた真田さんの地道な努力が、今回の快挙につながったといえる。

 黒沢明監督の「七人の侍」など、かつて盛んに作られたスケールの大きな時代劇は映画、テレビともに日本では減っている。

 SHOGUNは日本の時代劇作りと、資金力を含めたハリウッドの力が合わさってできた作品だ。

 多様性の時代にあって、米国では韓国など他国の作品の評価も高まっている。今回の受賞を機に、日本の時代劇が世界を席巻する日が来ることを期待したい。