野の火を感じさせる絵
栗田宏の絵に、火を感じてきた。
かつて、田んぼでは秋になると火が燃された。野焼きは、今は見られなくなった。けれど収穫の済んだ田に立つと、繁茂していた植物が消えた大地に、なぜか見えない火が燃えている気がする。
その火は、光であり、熱であり、形の定まらない生き物であり、存在と非存在の間の空隙(くうげき)であり、夢であり、感情であり、眠りであり、覚醒であり、動きであり、静止であり、激しさであり、穏やかさである。
そんな野の火を。
栗田は本格的に絵を始めた20代のころ、白根市役所に勤務していたが、自分の手からそのような絵が生まれるのを見て、それまで描いていた絵が「うら」だと感じ、役所に勤務することも...
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