「人」の多様な思い刻む

 千葉市の藤原祥から送られてきた、1980年代から最近までの大小の絵を間近に見ていると、おだやかで、激しい、哀しみと希望と、安らぎの入り交じった微風が心の草むらを揺らしていく。

 この印象はじかに表現するのが難しいので、間接的説明を試みたい。

 9月末に群馬県で開催中の中之条ビエンナーレを訪ねた。古い木造校舎が会場になっていた。100年以上も前に塗られた土や漆喰の壁は後年の塗装、汚れ、傷などを集積させ、黒ずんだ木枠の間でふしぎな“音”を発していた。そこに色鮮やかな絵が置かれると、絵の響きと、その音が混じり合って、新しく、そして古い音楽が流れだすように感じた。

 藤原の絵にも、その年代物の壁のような「...

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